紫隻鬼愛
□特権
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俺様の名前は猿飛 佐助。目下、不毛な恋をしてます。
目の前にはその相手。現在、悩み相談を受けてるところ。信頼されてるらしくて、よく相談されるんだよね。
内容は──いわゆる痴話喧嘩。
不毛だろ?
「……なんで怒ったのかも分かんねぇんだ」
そう言って悲しげに目を伏せる元親は儚げだ。思わず見とれたけど、慌てて慰める。
「よく考えてみたら?案外簡単なことかもよ?龍の旦那は単純だから」
「……う〜ん」
言いはしたがはっきり言って、元親が分かるはずがない。
政宗が怒った理由は、本当に単純なもの。
──嫉妬だ。
元親が俺も含めて誰にでも好かれるから。
しかもその好意は友情の類ではなくて。
そして元親が誰にでも優しいから。
でも元親が優しいのは単にアニキ体質だからで、他意はない。そんな元親に理由など理解できるはずがないのだ。
「……やっぱ分かんねぇ」
だろうね。
「俺、このまま嫌われちまうのかな…」
ぽつりと呟いた元親に、そうなったら俺が入る隙もあるかな、なんて思った。
──政宗が元親を嫌うなんてこと、そんなことあるわけないけど。
最初は俺の方が仲良かったのに。
相談内容も始めは政宗が鬱陶しい、とかだったのに。
それが次は、政宗ってもしかして凄い奴なのか?なんて聞かれて。
そのうちアイツって好きな奴いんのかなってなって。
気づいたら、こんな風になってた。
悔しいけど、でも、俺は元親には笑っていてほしいから。
「大丈夫だよ、チカ」
「でもよ」
不安そうな元親に、安心させるように笑顔で言う。
「政宗は単純だって言ったじゃん?チカちゃんが笑ってやれば笑ってくれるって」
くしゃくしゃっと頭を撫でてやったらようやく笑った。
「……おぅ」
こんな場面、政宗に見られたらそれこそ怒り狂うだろうけど。
これくらいは許してよね。
不毛な恋をしてる俺様の、
俺だけの──特権。