紫隻鬼愛
□日常茶飯事
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西海の鬼こと長曾我部 元親は現在危機に陥っていた。
「Hey元親ァいいじゃねぇか…なぁ」
目の前には独眼龍と呼ばれる男が。
「……ッいいワケ無ぇだろうがァァッッ!!!」
思い切り、食卓を蹴とばす(床に固定されているため倒れはしなかった)。
ここは定食屋。政宗に奢ると連れて来られていたのだ。
元親の危機とは何か?
「Kissくらいでがたがた言うなよ」
そう、鬼は龍に接吻を迫られているのだ、満員の定食屋で。
「イヤだつってんだろ!!ここがどこだか分かってんのか!!」
腹立ちで身を震わせている。
「城下の定食屋。俺の城から徒歩で半刻、馬なら四半刻。店名は“お気楽堂”。味も良く、接客もしっかりしていて評判が良い。しかし最近近所に出来た“定食 風流”にやや客を取られ気味、現在客獲得に必死になっている」
さらさらと場所どころか切ない店事情まで語られ、店主は「なぜ、そんなことを…」と青ざめた。
「一番人気の狐うどんの隠し味は」
「もうやめてーーッッ!!」
「んなこと聞いてんじゃねーーッッ!!」
店主の悲痛な叫びと元親の怒号で政宗の台詞はかききえた。