永遠の小夜曲(セレナ-デ)

□12日『女子高生探偵』
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俺は辺りを見る。『1950円』と書かれた値札。9と5でいいや。
「9を5回だから――ろ、だな」
「何がですか?」
「頭文字、決めてるんですよ。携帯電話で9を5回押すと『ろ』になるんです」
「9と5はどこから?」
「適当に。こうすると意外とうまく行くんですよ」
という嘘。
「そうなんですか?」
「そ、そうなんです。それより、『ろ』で思い付く言葉、ありませんか?」
「ろう、です」
ろう?ロー?蝋?牢?
「どういう意味の?」
「思い付く言葉に意味が必要ですか?」
そう来たか。
「じゃあ、『ロー』さんでいいですか?」
「漢字は?」
「え?」
「どう書くんですか?」
「英語じゃないんですか?」
「当たり前です」
仮名称に拘るとは、相当な凝り性。俺は携帯電話を取り出し、『ろ』を変換する。
炉、路、露、絽…よし『絽』にしよう!もちろんなんとなくだ。
「糸へんに呂律の呂と書いて絽に、羽と書いて『絽羽』ってのはどうですか?」
俺の金色の脳細胞をフル回転させた力作だ。
「名字は?」
「ま、まだ拘りますか…」
「じゃあ、いいです」
絽羽さんはそっぽを向いてどこかへ行く。
「あ、待ってください絽羽さん!」
俺が止めようと走る前に絽羽さんは止まる。
「絽羽さん?」
「名前を呼んでもらうって、嬉しいですね」
「仮名称ですよ?」
「だとしても、です」
絽羽さんは笑う。
「そ、そうすか。じゃ、じゃあ、どっか行きますか」
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