永遠の小夜曲(セレナ-デ)

□10日『雨が降る』
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「もう、朝か…」
何事も無く目が覚めた。
時計を見る。
15時30分。
「げ、寝坊した」
羽衣に怒られる。
周りを見る。
誰も居ない。

「あ、れ?…羽衣?」
瞬きをすると、一人の白い少女が現れた。
いや、最初からいたのかもしれない。ただ、気付かなかっただけで。
「君は?」
白い少女に聞く。
「貴方は自由だよ」
白い少女は言った。
「どういう意味だ?」
「今までのは全部悪い夢だった」
そうだ、あれは悪い夢だったんだ。
「本当に…夢なのか…?」
「限りなく現実に近い夢だった」
当たり前だよな。ただのリアルな夢だったんだ。

「何かおかしくないか…?」
「何もおかしくない。貴方は幸運なんか奪われてない」
そうだ。幸運なんか奪われてない。
ゲームでもしよう、あれから一切進んでないんだから。
「…あれからっていつからだ?」
「貴方は眠っていたの。だから、昨日、8月7日」
そうか、忘れてた。
「なんで、知ってんだ?」
白い少女は少し動揺した。
「…私は貴方を見ていたから」
見ていた?
「だから、貴方は、昨日から、8月7日の朝から動いてない。あれはただの夢」
「それを証明できるのか?」
「証明も何もない。現実だから」
「違う。これがただの夢だ」
白い少女を睨む。
「今日は7日だよ」
「そんな訳がない。今日は10日だ」
妄言はやめろ。
俺の中の誰かがそう言った。
「それが妄言だ、いい加減目を覚ませ!」
「彦星をやめて。貴方の、ためなの」
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