消せない温もり。

□消せないぬくもり。番外編『眠れぬ夜の処方箋 その後』
1ページ/1ページ



ルイスが持ってきたのは昔の恋愛映画だった。

失恋旅行をしていた男が海で女性と知り合い、心の傷を癒して両想いになるという内容だった。

「――ああ、感動したわ。ねぇルイス?」

隣にいるルイスを見ると、いつのまにか夢の世界へ行ってしまったようで後ろにもたれながら目を閉じていた。

「……疲れてたのにね」

なんだかつき合わせてしまったようで申し訳ない気がした。

(……可愛い)


――可愛いなんて失礼かな。


寝ているルイスに顔を近づける。

DVDはスタッフロールが終わり、画面は暗くなっている。

この静かな時に、自分の心臓の音が余計に聞こえるのではないかと思った。

「……ルイス?」

ルイスが完全に寝ているのを確認すると、さらに顔を近づける。




10センチ……



8センチ……



5センチ……



3センチ……





もう唇が触れる……――










「ん……」












「!!!!!!!!」

慌ててルイスから離れる。

「……あれ……俺……寝ちゃったのか?」

「おっおはよっルイスッ」

「――どうかしたか?」

「別にっ」

(心臓によくないっ……)

「そうか?――さて、本格的に寝るとするか」

「う、うん……」






――あぁ……せっかく涼しくなったのにまた体温が上がってるわ。







今夜は眠れそうにない――……。






end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ