short

□笑顔
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笑顔


「ひっばりさぁん!」

「はぁ。なんで君はいつもそう突然なの?」

「へぇ?なんてゆーか…テンションが上がって!」

「質問に対する答えになってないよ。」

名無しさん…僕の彼女。
…このコはちょっと…というかかなり変わってる。

「あのー…あのですね?」

このコは妖精か何か見えてる。多分。
夢の世界にでも行けるんじゃないかとたまに思う…

「雲雀さん?聞いてます?」

「何?」

「今日…学校の後って、空いてます?」

また始まった。
ここの所立て続けに同じことを聞いてくる。風紀委員の仕事があるからいつも断ってるけど。

「風紀委員の仕事があるっていつも言ってるでしょ?」

「あ〜やっぱり?ですよね〜」

「何か用事でもあるの?」

「いえ!特には。
私、終わるまで待ってましょうか?」

いつも本当にヘラヘラと…
笑顔の大安売り大変だね。
ちょっと苛苛するな…

「先に帰って」

「あ…は〜い!分かりました〜
じゃあ雲雀さんっさようなら♪(ニコ」

今日はやけに往生際がいいな。
まあそっちの方が楽でいいけど。

でも、そう思った僕の気持ちは一瞬で崩れた…不意に見えた、応接室の扉をしめる名無しさんの顔は、さっきまでの笑顔とは裏腹に…酷く落ち込んでいた…

あまりの変わりように少し驚いた僕は、
名無しさんの後を付けることにした…
応接室を出てしばらく、最初は暗かった顔が徐々に真顔に戻ってきて10分程、
名無しさんはケーキ屋の前で立ちどまった…

そこには、僕等と同じぐらいの年のカップルが…仲良くケーキを食べてる姿があった。
名無しさんは、それを見るなり目尻に涙を浮かべた…でも、それはほんの一瞬で、草食動物に話しかけられると…いつもの笑顔が戻ってきた…僕はそれに、酷く違和感ん感じた…

まるでその笑顔は仮面。
悲しい顔に無理矢理張り付けた偽りの笑顔。それでもその笑顔は柔らかで、温かみを帯ていた…

僕は、そんな名無しさんが何故か愛しくて…
知らない間に強く抱き締めていたー…

「…雲雀…さん…?」

「何?」

「お仕事は…」

「終わった。」

「そうなんですか〜お疲れ様です♪」

またその笑顔…もう見たくない…

「寂しかったなら…言えば良いのに…」

「え…?」
名無しさんは少し呆気にとられたかのように固まった。

「寂しくなんて〓〓
ほら!雲雀さん風紀委員長だし!忙しいのぐらい承知ですよ♪」

「やめてよ。」

やめて…

「え?雲雀さん…?」

「どうして本当のこと言わないの?」

言ってくれなきゃわからない…

「雲雀さん…」

「名無しさん…」

名無しさんの顔から笑顔が消えて…忽ち涙でぐしゃぐしゃになった…

「ぅ…あ…だってっ…我が儘言ったら迷惑だと思ったから…っ…本当は…寂しかった…!」

「うん…」

「雲雀さん…最近デートもしてくれないし…一緒にいても全然話しかけてくれないし…」

「うん…」

「私だって…もっと恋人らしいことしたいよぉ…でもっ…でも…」

僕は甘えていたね…名無しさんの優しさに…
いつも側で笑っていてくれるのが当たり前みたいになって…名無しさんの心が…こんなに悲鳴を上げてたなんて…

名無しさんがいつも笑ってるのは…
強いからじゃない…一人でも大丈夫だからじゃない…
本当は弱くて…脆くて…一人じゃ壊れてしまう…だから笑顔で取り繕って…本当に馬鹿…

「名無しさん…」
僕は一層強く名無しさんを抱き締めた…

「雲雀さんっ…」
名無しさんはもっと強く抱き締めきた…頬に伝う涙を幾等拭ってあげても、止まることなく流れる…
僕はどれだけ寂しい思いをさせてきたんだろう…

僕は名無しさんの唇にそっとキスをした…

「ねぇ名無しさん、一緒にケーキ…食べようか?」

〜END〜

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