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□愛愛傘・・・?
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「雨…かぁ…」
恭弥と一緒に帰ろうと…応接室のソファに座って、大好きな##NAME2##を読んでいた時のことでした。
そういえば…付き合い始め、「##NAME2##なんて、意外と渋い趣味してるんだね。」なんて言われたっけ…好きなんです。##NAME2##…
「名無しさん、傘持ってきた?」
「ううん。忘れた」
「だろうと思った。
ひどくなってきそうだし…帰ろうか?」
「恭弥、傘は?」
「持ってるよ。」
「だったら仕事終わってからでも良いよ?」
「でも、もう遅いし…帰ろう。」
「そう?わかった。」

私は立ち上がって、軽くスカートを
<パンパンッ>とはたいて“行こうか!”
と恭弥に振り向いた。

恭弥は軽く微笑んで、
学ランを翻して私の前を横切って行った…

私はその後ろから、
小走りに恭弥の横に付く…

<ちょん>と触れれば、
握ってくれる大きな手…

玄関に着いたら、雨で冷えた空気が冷たかった…
<バサッ>と恭弥が傘を開いて私の方を向けば、「入りなよ」の合図。

「お邪魔します」
「どうぞ。」

微笑んだ恭弥を…“王子様みたい”なんて柄にもなく乙女な思考を働かせたことは、恥ずかしいから内緒です。

<テクテクテク…>
「………」
「………」

沈黙。
別に辛くはない。けど、ドキドキが増すのは事実で…
でも、紛らわそうにも…雨のせいで楽しい話題が浮かばない…

雨は…嫌いだ。
意味もなく、悲しい気分になるから…
涙が出そうになるから…

きっと…私が泣いても…
理由を聞くまでもなく…恭弥は慰めてくれるんだろうけど…
というか恭弥は…私が辛い時、
察してくれるから…

「名無しさん、離れすぎ。僕が濡れるでしょ」
ほら、また。
「あっ…ゴメンゴメン〓」
引き寄せるふりして私を抱き寄せるんだから…
「全く、仕方がないね、名無しさんは。」
肩を抱かれて、寂しいような、切ないような気持ちは無くなっていく…
えへへ と笑ってみせれば、
ふっ と不適に微笑まれて…
なんだか余計にドキドキして…

どうしようもなく愛しい気持ちに、
恭弥の腕に絡み付いたら、
「ワオ。なんだか今日は積極的だね」
と言われて…
「良いでしょ、たまには!」
なんて…憎まれ口をたたいてしまう…
あぁあ。可愛いくない…

本当は“こうしててもいい?”
とか、“ちょっとだけ…”
とか…上目使いを凝らして出来ればいいのに…
まぁ…努力はするんだけど…
実際この美形を目の前にすると…変な計画は全部水の泡となるのです…

「……名無しさん…」
「へっ!?あ…」
いつの間にか…家に着いてたみたい。
「ぷくく)変な声。」
恭弥がクスクスと笑った…
「だって考え事してたんだもん!」
「ふぅん…どんな?」
「別に…何でも良いでしょ!」
まただ…また憎まれ口…
こんなんじゃ、いつか愛想尽かされちゃうんだろうな…
「ふぅん…まぁいいけど、離してくれない?
傘畳めない。」
「うん…」
嫌だ…離したくない…
けど…そんな勇気ない…
名残惜しくも腕を離せば、いきなりスッと冷たい冷気が私を襲う…

なんだか急に寂しくなって…
堪えられなくて…
思わず恭弥の背中に抱きついてしまった…
「…名無しさん?」
「………」
お願い…離してなんて言わないで…
私は少し力を込めて…すがるようにしがみついた…
「名無しさん…ちょっと離してくれない?」
「………」
ガクッと…肩が落ちる…
あぁダメなんだ…
いつもそっけないような私が…
いきなり甘えたらダメなんだ…
ゆるゆると抱きつく力を緩めれば…

「ひゃっ…!」
いきなり強く抱きしめられた…
それはもう、締め殺されるんじゃないかってぐらい…
「恭弥…苦し…」
「なんであんな…可愛いことするの?」
「え…?」
可愛いことなんてしてませんけど。
なんて言いませんよ!!
「今日の名無しさんはなんだか甘えん坊だね…」
「だ…ダメかな…」
「ううん。ダメじゃないよ…」
「…よかった…」
みるみるにやけていく表情…
私ったら気持ち悪い…;;
「名無しさん、今にやけてるでしょ?」
「えへへ…」
「好きだよ。」
「うん…私も…//」

一層強く抱きしめ合って…
彼の匂いを、力強さを、優しさを感じて…
こんな風にしてくれたのが雨のおかげなら…ちょっとぐらい好きになってもいいかな…なんて…

愛と愛に挟まれた傘…
相合い傘ならぬ
“愛愛傘”ってこのこと…?

〜END〜

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