□私を月に置き去りにして
1ページ/1ページ







「よぉ、シェリル」





「アルト!」







扉を開けるといつもと




どこか雰囲気の違うアルトがいた。




「こんな朝早くにどうしたの?」






「今からSMSの仕事で当分会えそうにないんだ。」






「え!まさかそんな事言って、浮気じゃないの?」





冗談を言って、この違和感をはぐらかそうとしても


上手くいかない。






「俺がそんなの、するわけないだろ」



小さな笑みを浮かべる彼。




もちろん、彼がそんなことする男じゃないってこと位、


これでもかってくらい知ってるわ。




「ふふっ、でもそれって、いつもの事じゃない?」






「…あぁ、そうだな。」




口元だけで笑ったアルト。


こういうの、ニヒルって言うのかしら、




きっと。







やっぱり、どこか普段と違う微笑に胸がざわつく。




「ねぇ、アルト。

どんな仕事なの?」





「任務については絶対に他言しちゃいけねぇんだ。


お前も知ってるだろ?」






「知ってるけど…」





やっぱり、企業秘密ってやつよね。




どの業界でも有るわ。






「…シェリル」






「…何?」





真剣な彼の眼差し





胸が高鳴る








「俺が帰ってきたら、披露宴しような。」






「…えぇ。」







左手で光る指輪を握りしめた。





「無事に帰ってきなさいよ、アルト」






「あぁ。…行ってくる」
























あれから何年たっただろう。






彼は未だに帰ってこない















(早く帰ってきて、アルト)

















アルトはまだ戦闘機に乗ってるかもしれないし、もういなくなっているかもしれない。

どっちも有りです。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]