□雨はやんだ模様
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ザァァァァ……

 バシャ
    バシャ



「はぁ…、もう!何でいきなり雨なんか降り出すのよ!」


「今日の天気予報は晴れだったのにな」


「もう!アルトのバカ!」


「って俺かよ!?

…でも、まぁここなら少しは凌げそうだな」


「まぁね、


はぁ…」


「ん?どうかしたのか?」


「なっ何でも無いわ」


…はぁ…今日は折角服もお気に入りで、メイクも髪型もいつも以上に頑張ったのにな……
アクセサリーなんて、一時間もかけて選んだのに!

…雨で全部台なし。

なんか…サイアクかも…







…ってあたし何でこんなに落ち込んでるの!
ダメダメ!!ダメよ!
折角のデートなのに、こんな暗かったら空気悪くなるじゃない!!
笑顔でいなきゃ!


「ねっねぇ!あたしの今日の服、どう?」


「どう…って…。まぁ、良いんじゃねぇの」


「このネックレス、凄いお気に入りなんだから!」


「へ、へぇ、そっか。
あ〜…、あの液晶、ランカのライブ写してるぜ。
見てみろよ。」





…なんで今ランカちゃんの話題なんか出すのよ…
あたしへの返事も素っ気ないし…やだ…











ポロ… ポロ…


「っ!!なんだ!?シェリル、どうかしたのか?」


「ん〜〜〜〜…グスッ…」


やだ、泣いちゃダメ。


「どうしたんだ?どっか痛いのか?」


「〜〜ち、違う……グスッ…」

折角のデート…なのに…


「……落ち着いて、大丈夫。俺が居る。」


「うぅ〜…ヒック…」


涙が…止まらない…


「大丈夫、大丈夫だ…シェリル。」


そんなに優しくしないでよ…


「…どうしたんだ?」


「だって…」

「だって?」

「…い、今はあたしとのデート中なのに、ランカちゃんの話題とか出すし、」


あ、ダメよこんなこと、いっちゃ


「今日の服だってアクセサリーだって凄いお気に入り、で、選ぶの大変だったの、に」


こんなの、あたしの我が儘


「もっと可愛いとか綺麗とか言ってほしかった、のに」


嫉妬までして


「雨まで降って、き、て髪もぐしゃぐしゃだし」


雨なんか仕方ないことなのに


「……」

「……」


アルトも…呆れちゃったよね…

「…ごめん、アルト。今日はもう「待てよ!!」


「え…」


「はぁ…あのなぁ!良いか?
今日のお前は最高に可愛くて綺麗だ!
服もアクセサリーも髪型もいつも以上にな!
でも、お前今の自分の格好見てみろよ!」


「え、な…にって…きゃあ!!」


そこには雨で濡れて体のラインがはっきり出ているシェリルがいた。


「こんな格好でまじまじと見れるわけないだろ…!」


頭をガシガシとかきながら赤面するアルト。


「それに、ランカの会話を出したのは…その…」


「…?」


「お前の服とかから意識そらすためだ!
ったく、言わせんなよ!」


恥ずかしいのかアルトはそっぽを向いてしまった。


「なっ何よアルトのくせに!
恥ずかしいじゃない!早く言ってよ!」


「言えるかよ!」


「……」


「……プッ」


「、あっはははは!」


「ハハハハ!」


「ふふっ。もー、なんかすっきりした!」


「はははっ!そうだな…って、なんか俺らすげぇ注目されてねぇか…?」


「…え?」




 ねぇ、あの二人すごい美人〜!!

えっあれシェリルじゃない!?
え、嘘!?

やだ、あそこシェリルが居る!
なになに?







シェリルが泣いたことと、アルトが大声で弁明したことで、周囲の人々から二人はかなり注目されていた。



…そして、彼女がシェリルと分かると話し掛けてみたいのか、たくさんの人…特に男達がシェリルに近づこうとしていた。



おい、やっぱりシェリルだぜ!

泣き顔もすげぇ可愛い…!





「ど、どうしよアルト…
ここから離れた方がっ…て、きゃあぁあ!」


「よっ…と!捕まっとけよ、シェリル。
家まで走るぞ!」




そこには、アルトに横抱き、所謂お姫様だっこにされたシェリルの姿があった。


「ばっばか!みんな見てるじゃないっ!
それに雨だってまだ降ってるし!」


「もう小雨だし、大丈夫だろ。」


「じゃっ、じゃあ下ろしてよ!重いでしょ!」


アルトの腕の中でジタバタと暴れるシェリル。


しかし、そんなものはアルトにとって微かな抵抗でしかなかった。


「全然、軽すぎだぞお前。
ちゃんと食ってんのか?」


「食べてるわよ!」


「よし、じゃあ走るからな。」

「えっちょっと…っきゃああぁ!!」


シェリルの言葉を最後まで聞かずに、アルトは走り出した。



…周りの野次に勝ち誇った笑みを見せながら……











…タッタッタッ






「最初からこうしとけば、良かったな。」


「え?」


「最初からこうしとけば、さっきの場所であんまりお前をジロジロ見られなくて、済んだだろ?」


「え…別にそんなの…」


「つーか俺が嫌だ。
お前の体、他の男に見られるのなんてな。」


「!も、もう!」















「……あっ、アルト!雨、止んだみたい。」















→おまけ


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