never

□3.いつもと違う
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黒子くんに言われた通りに試合を見に来た。

体育館を覗くと、もうすぐにも試合が始まるらしく、ベンチに集まっているのが見えた。

っと…黒子くんはっと…いた!

うっかり見落としてしまいそうになったが、毎日のように彼を意識的に捉えているだけあってすぐに見つけることができた。

ユニホームを着ていてもやっぱりあまり強そうには見えなかった。

ただ、この前黒子くんが言っていた"周囲を生かすプレー"というものは気になった。

一体どんなプレーをするのだろうか。

わたしが体育館に足を踏み入れると、黒子くんはわたしに気付いたらしく、一旦こちらに来てくれた。

「おはようございます、神崎さん」
「おはよう黒子くん」
「来てくれて嬉しいです。頑張るので応援よろしくお願いしますね」
「うん、頑張ってね!」

まるで付き合ってるみたいな会話に、わたしは喜びを感じていた。
黒子くんが見せた微笑みに思わず見とれてしまいそうになりなからもちゃんと応援しようという気にはなっていた。

でも、彼がわたしのことをどういう風に見ているのかは、いまのわたしにはさっぱりわからない。



試合が始まり、わたしはまず黒子くんの動きに注目しようと思った。

…なに…これ…

シュートもドリブルもしない。なのに……あれ?

火神くんは身体能力もすごく高くて、チームの中心になるのはわかる。

だけど、それだけじゃない。火神くんがこういったプレーができるのは、すべて黒子くんが絶妙なパスをだし続けていたからだった。

絶妙、というより…もうそのパスさばきは一人だけ群を抜いていて、そんな言葉でいうには生ぬるいくらいだった。

周囲を生かすプレーって、こういうことだったんだ。

この前見たときは、いろいろ嘘くさいと思ってしまったが、撤回せざるをえない。

黒子くんって…すごい。



黒子くんは最後まで試合には出ていなかったけれど、誠凛が圧勝した。


試合に出ているときの彼は、いつもと全然違って見えた。

まるで、別人のようにすら見えた。

黒子くんが試合をしてるところをみただけでこんなにも彼を過剰に意識してしまうなんて、いよいよ本気で黒子くんのことが好きなんだと認識する。


そして、彼の一番近くにいたいという、そんな気持ちがあることも、認めるしかなかった。




4.働かない抑止力
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