PLAYERS
□叶わない辛さ
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『あした、部活終わったあと、ひま?』
絵文字もなく、えらく唐突なメールだなぁと思ったが、神崎さんからメールをくれるなんて珍しすぎて、テンションがグッと上がる。
『相談したいことがあるんだけど』
相談か、なんだろうと思いながらも、神崎さんの頼みとあっては断る選択肢はない。快くOKした。
次の日、部活後───
練習着から制服に着替えて、校門の方に向かうと、同じく制服に着替え直した神崎さんがいた。
「ごめん!遅くなったっス!」
「ううん、わたしこそ急に相談したいとか呼び出してゴメン」
とりあえず話せそうな場所ということで公園に向かった。でもまさか、そこで聞かなきゃよかったとか、後悔するなんて思わなかった。
「…あのさ、黄瀬君てさ、笠松先輩と仲良いよね?」
「………えっ?」
思わず聞き返してしまった。
か、笠松先輩?何でこんなこと聞いてくるんだ?と思ったが、神崎さんの表情を見て、頭の中で一つの仮説が簡単に立てられて、嫌な感じがした。
本当は、知らないままの方がよかった。
「ちょっ…何で笠松先輩?」
「なんていうかその……わたし」
その先の言葉を想像できて、聞きたくなかった。でも、神崎さんは俺がそんな風に考えてるなんて知らない。
「気になってるんだ…笠松先輩のこと」
その瞬間に、俺の中で何かが音をたてて崩れてく気がした。最初、なにを言ったらいいのかわからなくて、それに気がついた神崎さんが俺の顔を覗き込んだ。
「…黄瀬君?大丈夫?」
「えっあ、大丈夫っスよ?そっかそっか笠松先輩なんスね〜…」
すると神崎さんは恥ずかしそうにコクリと頷く。
その照れた顔なんてものは初めて見る表情で、こんな顔もするんだなんて考えながらも、やはり俺に気持ちが向いてないのを悟り、悔しい気持ちになった。
その日からたびたび相談を受けることもあったが、笠松先輩より俺の方が絶対神崎さんのこと好きな自信もあった。
相談を受け始めてからか一緒にいることが多くなって、まわりからは「黄瀬と神崎は付き合ってる」みたいな感じに見られてるとも聞いた。実際、そんな話があるとしたらこっちからそうしたいところ。
でもそうはいかないなんて、自分が一番よくわかってて、尚更きついと感じた。
たまに泣きついてきたりすると、もうこのまま俺のものにしちゃいたいなんて考えも浮かんで、でも何も行動に移せなくて…結局神崎さんが好きなのは笠松先輩だって嫌というほど思い知らされ、正直辛くてしんどかった。
ハハハ…告白もしてないのに振られるなんて初めてっスわ。
そんな風に自分を嘲笑しては何もできない自分に腹が立った。
何で俺じゃないんだなんてのはもう、数え切れないくらい頭をよぎった。
でも、たまに神崎さんが笠松先輩と話してるとこみてると、思う。やっぱり俺じゃ駄目なんだと。
それくらい、神崎さんの表情から笠松先輩への気持ちが溢れていた。
当の本人はそれにまったく気づいてない様子だったが。
でも、それからしばらくしてから笠松先輩も神崎さんのこと知らないうちに目で追ってるって気付いた。
本当にほんの少しだけど。
そういう2人の様子を見て俺は決めた。
神崎さんの思いがちゃんと伝わるように、俺が協力する、と。
自分の気持ちをグッと押さえこむ決意をした。
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