PLAYERS
□密着しすぎて
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月明かりが窓から差し込んで、その光だけが頼りのこの教室。
急に黄瀬くんの声がしなくなったと思ったらそのままの状態でいきなりあたしの首筋に舌を這わす。
「ひゃあっ」
そう小さく悲鳴をあげると、とっさに彼は片手であたしの口を抑えた。
「だからみくっち、静かに〜」
抵抗もできなくて、ただコクコクと頷く。
それから羽交い締めにしていた手をほどいたと思ったら、あたしの腰に右手を回して、空いた左手で今度は自分のほうにを抱き寄せる。
後ろにいる彼にちょっとだけ寄りかかるような姿勢になる。
「さっきも思ったんスけど…この体勢なんかものすごく安心しないスか?」
と言いながら、首筋に顔をうずめてキスをする。
たしかにあたしも思ってしまった。こんな状況なのに、安心してしまう。この気持ちはなんなのだろうか。
そんな彼に対し、声が大きくならないように抑えながら言う。
「ん……そう、かもね」
「あれ、みくっちもそう思ってたんスか?いっつも興味ないフリしといて意外と俺のこと好きだったり?」
そう意地悪く言われ、はっとする。
そうだ…いつも気付かないフリをしてただけなんだ。本当は、本当はずっとあたしは。
「……そうだね」
「え?」
彼は冗談ぽく言ったつもりだったらしいが、あたしがあまりにも真剣に言ったので、驚きの声を出す。
「…そう。あたし…本当はずっと黄瀬くんのことが好きだった」
「…ちょ、マジで言ってんスか?」
信じられない、といった声色。
後ろから驚きの声が聞こえて、あたしも告白したことに対しちょっと恥ずかしい気分になっていた。
「嘘じゃない」
そう言うと彼は手をほどいてあたしの向きを反転させて、自分と向き合うようにした。
月の薄明かりに、黄瀬くんの端正な顔立ちが目に入る。
いつだって、かっこいいと思ったこの人。
いつの間にか好きだった人。でも叶うわけないと、認めたくないと興味のないフリをし続けた。
でも、それも今日で終わりにしたかった。
「本気…スか?」
「うん、本気」
「でも、そんな素振り一度も見せなかったじゃないスか」
「黄瀬くんの言うとおり、興味のないフリをしてただけ」
「みくっち…」
さっきとは打って変わって、驚きであたしを見下すような言葉などかけられないらしく、ただびっくりした目をしていた。
そして、なぜだか挙動不審になる黄瀬くん。
「ていうか俺、そんな風に思ってくれてるなんて思ってなくて。今日だって本当にたまたまみくっちに会えたからって思っただけで」
びっくりした様子のまま一方的に言う彼。
それに対して、もう細かい言葉を交わすのが面倒臭いと思った。
「……黄瀬くん、静かにして」
あたしはそう囁くように言うと有無を言わさずに正面から彼の唇を塞いだ。
最初はびっくりしたみたいだったが、そのあと黄瀬くんのほうからあたしの頭の後ろを押さえて、そのキスを受け入れてくれた。
「んぅ…んっ」
お互いがお互いを求めるようなキスを繰り返す。離しては塞ぎ、塞いでは離す。
あたしからしたはずなのに、繰り返すうちに主導権は完全にあっちに持っていかれた。
「みくっち、キス上手くないっスか?俺久しぶりにキスで動揺したっスよ」
「違う…黄瀬くんが上手いだけ」
「それ、誉め言葉?嬉しいこと言ってくれるっスね」
そんな風に言葉を交わしては強引に舌をねじ込む。
本当に彼のキスは上手くて、何度もしたいと自然と思ってしまう。
彼の肩に手をかけながら、必死にそのキスを受け止めるのだが、容赦ないその仕打ちにあたしの頭の中は昇天してしまいそうだった。
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