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□それでも大切な人
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最初のキスをやめて、唇を離すと唾液が糸を引いた。



それを伝うようにしてもう一度キスをしてくる。



こうなってしまった大輝はあたしじゃもう止められっこない。


手をジタバタさせてみたり、顔を背けようとしてみたりするが、どれも効果なし。



これでも実は精一杯抵抗しているつもりなのだ。



しかし大輝は言う。






「それ抵抗になってねーから」



「……やめて…っ」



「聞こえてねーって。みく」



「キス…苦しい…」




息も上がってすっかり顔も耳まで真っ赤になってしまっていた。




「苦しいだぁ?気持ちいいの間違いだろうが」



「や……っ」




大輝はキスをするときに、こうやってあたしに対して言葉で責めるのを忘れない。


彼自身がそういう性格であることと、あたしがそういうのが好きな性格であることをわかっているからだった。






「キス程度で息上がってんじゃねぇよ。相手してくれっつったのみくだかんな」



「わかってる、よ」



苦し紛れに受け答えをする。



もう唇も舌先もみんな麻痺しているみたいで、改めてキスしすぎたと頭の中で判断する。



しかし、止めるという選択肢はない。やめさせてもらえない。





見たとおり、大輝はキスからもう既に激しい。今日はしないと言ったけどいつもの情事なんかは毎回失神させられるレベル。




本人曰わく、"みくが失神するくらいまでやらねーと気が済まない"んだそう。






「もっ…大輝、ほんとやめて…」



「あ?誘ってんの?」






そして本人曰わく、"抵抗はお誘いと同じ"と。だから前に一度抵抗するのをやめてみたことがあるが…それはそれで散々だった。完全にされるがまま状態になってしまったのだった。







「やっぱキスだけとか飽きるなー」



「今日は絶対駄目なんだからね!」




「気が変わったって言ったらどうする?」



「……怒るよ?本気で」



「上等じゃねーか!」



と言ってきたので、逃げられないあたしは覚悟を決めたが、予想に反して大輝は軽く首筋にキスをしただけだった。




「今日はこんくらいで勘弁してやるよ、みく」



「……え?」



「え?ってお前嫌がってたわりにしたかったのかよ?」



「………違うけど」








すると馬乗りになるのをやめてあたしの隣に背を向けて横になる。



そして大輝からさっきとは違う優しそうな声が聞こえた。






「……あしたはどっか遊びに行こうな」



それを聞いて、やっぱり大輝は大輝で、あたしの大切な人だと思った。




「うん、絶対行こ」




力強く返事をする。




優しかったり、優しくなかったり、よくわからない人だけど、でもこの人と一緒にいることが幸せと思うほかなかった。












end.
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