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□好きとか嫌いとか
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軽く触れて離すだけ。

赤司くんは呆れたような、でも優しい眼差しで、小さく微笑むようにしてわたしに言う。




「つくづくみくは我慢のきかない奴になったな」



「赤司くんが悪いんだよ?そうやってわたしのこと焦らすから」



「たしかにそうかもしれない。僕の前ではみくはもう理性なんて無いに等しいからね」



「だから、赤司くんが悪い」




わたしだって付き合い始めはもうちょっと自分に歯止めをきかせていたつもりだったのに、今となってはだんだんそれも無意味になってきたことに気付いていた。


彼のそばにいると、彼を求めてしまうようになっていた。

"好きが故"と自負してはいるけれど、そんなふうに赤司くんに思わせ感じさせられているのだと嫌というほどわかる。




それもこれも赤司くんのせい。



「そんなに僕のことが好きか」



そうわかりきったことを問いかけながら、わたしの髪をやんわりと撫でてくる。その仕草も、手の体温すらも愛しかった。





「好きだよ、わかってるくせに」



「ああ、知ってたさ」



「なら、わたしは?わたしのことは、好き?」



「もし嫌いだと言ったらどうする」



冗談混じりな妖艶な笑みを浮かべながらわたしを見下ろしてくる赤司くん。


赤司くんは簡単に"好き"とは言わないから、だからたまには言わせてみたい気持ちになるのだけど、やはり無理みたいだ。



「そんなこと言うならわたしだって、赤司くんのこと嫌いになるよ」



強気なまま言い返しても、動揺する素振りも見せない。むしろ"そう言うと思った"とでもいいたげな表情を浮かべた。





「でもみくは僕を嫌いになるなんて出来ないさ」



「赤司くんて、わたしのこと、何でも知ってるみたいに言うよね」



「僕がいくらみくを嫌いになってもみくが僕を嫌いになれるわけがないことくらいは知ってる」




たしかに赤司くんの言う通りなのだ。

わたしが赤司くんを嫌いになれるわけがない。いくら罵声を浴びせられて酷い扱いをされたとしてもわたしはきっとずっと好きなままでいるような気がする。


最終的にもし赤司くんがわたしを殺したい程憎むようなことになったとしても、それで彼に殺されることになるのならそれすらも受け入れてしまうのだろう。



全ては好きが故と言うべきか。自分でもこれだけはどうしようもない。嫌いになろうったってなれないものはなれないのだから。





「………わたしが赤司くんのこと、嫌いになれるわけがないじゃない」



「だろうな、やはり。わかっていたことだ」





と言ったと思えば、赤司くんは急に身体に少しだけ力を入れて、俯くわたしの顎をもう一度持ち上げた。



「……赤司くん……?」



不安そうに彼の目を見つめると、ゆるく笑ったと思えば不意に、わたしの後ろにある壁にわたしを押し付ける勢いで深いキスをしてきた。



「んんっ!」



あまりに突然すぎて理解するのに少し時間がかかった。



実は赤司くんはあまりこういう"一方的"といったシチュエーションを好まない。


大概わたしを従わせてしてほしいことをさせるような形にもっていくのが彼のセオリーのはずなのだが。



赤司くんからの不意打ちのキスなんてことはイレギュラーだった。






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