PLAYERSU

□大切で必要で
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「ん〜…やっぱりこたつで食べる"まいう棒"は最高〜」


「それを言うならこたつで食べる"みかん"とかじゃないの、敦」


「えー?まぁ、たしかにみかんもおいしいけど、やっぱりお菓子は最高じゃね?」



はぁ、とわたしはため息をついてテーブルに置いてある彼のお菓子に手を伸ばす。


すかさずそれを取られ、高々と持ち上げられてしまうのは、もう慣れっこだ。


「また独り占めして」

「だめ、これは俺がずっと楽しみにしてた新商品なんだから」


薄く笑ってそこからひと袋のポテチを取り出す。本当に手が止まらない。


敦と2人でこたつでぬくぬくとしているわけだけれど、本来なら何人か入れるこたつも、わたしと体格のいい彼の2人でもう定員となってしまっている。


まあ、他に入ってくる人もいないからいいのだけれど。



敦は、今年になってから東京からはるばるここまでやってきたという。

なんでも、バスケのスポーツ推薦とかなんとかで、ウチの高校から声が掛かっていたらしい。

この体格を見ればそれも納得できる気がした。

彼がプレーしてるところなんて、見たこともないし、見ようとしたこともないけど。

敦は、試合を見に来て欲しいとか、わたしに一言も言ったことがない。わたしは、一度だけ見てみたいな、とぼやいたことがあった。


そのとき彼はこう言ったのだ。

"来てもいいけど、きっとつまんないよ?どうせこっちが勝っちゃうし"と。


口ではそう言っていたけれど、なんだかあまり来て欲しいような目をしていなかったので、わたしはそれ以来一度も言ったことがない。


でも、試合なんか見られなくたってそんなの正直どうだって良かった。

こうして2人でいられる時間があること。それが何よりわたしにとっての充実した時間で、幸せな時間だから。




こんなくだらない日常でも、わたしにとっては大きな意味を持っていた。



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