Love you

□その19
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けどまた一人で笑ってたらおかしいと思われるから、心の中で笑った。



「そういえば、先輩達と集まらなくていいの?」


財「謙也さんが、集まれとか言うとったけど、まあ平気やろ」



て、自由人だな、オイ。



てことはあたしらだけ別なんだ。

それなのに白石先輩の家に行っちゃうとこがすごい。

本当、遠慮も容赦もない。


財「さー、着いたで」



と、着くなり勝手に上がりこもうとする財前。


「ちゃ、チャイム鳴らさなくちゃ」


財「どーせそのうちみんな押し掛けるやろし、先に入っとってもええやろ」


礼儀も知らないのか(笑)


とまあ、あたしと財前は言って強引に白石先輩の家へズケズケ入ってしまった。


財「やっぱまだ来てへんみたいやな」


「ま、そりゃあそうだろう」


財「そのうち来るやろ。ほな、部長の部屋行っとく?」



「う…うん」



とりあえず流れで白石先輩の部屋に勝手に上がっちゃったんだけど…






気まずい。




二人きりってなんでこんなに緊張するんだろう。



財前といるとき、いつも感じるんだ。

だからいつも笑ってはぐらかそうとして。




照れてるの、素直になれないのを悟られるの嫌で。


財前の前では笑ってばかりいた。


もう泣かない。


前にあたしが泣いたとき、財前はなんだか気持ちこもらないプレーをしていて、


見ていると笑えもしなくなった。



だから、あたしが笑って、少しでも財前が笑顔になってくれたらいいな。




黙りっぱなしの財前が急に口を開いた。




財「…橋本に…渡したいものがあってん」



「…え?何何?」



あたしに渡したいもの?
なんだろう



財「……これ」



財前は鞄からピンク色の小さな袋を取り出し、あたしに手渡した。



「これなに?」



財「あけてみ」



財前から贈り物なんて珍しいなあ、なんて思いながら袋を開けた。



「これ…」


そこには薄ピンクのストーンのついた綺麗なピアスが。



「くれるの?」


財「おう」


「本当に?ありがとうっ!」


そのピアスがかわいくてあたしはめっちゃ喜んだ。



財「別に…」


いつどこで買ったんだろう?
こんな女物、財前が買っているところを想像したら、なんか笑いがこみあげた。



財「なに笑うてるん…」


赤面した財前があたしに言う。


「いやッ、本当にありがとうね!いつかお礼させてよねっ」



財「ふ……(笑)待っとる」



「つけてみてもいい?」


財「ええで」



あたしはそのピアスを自分の耳につけた。


「めっちゃ可愛いっ!!」


鏡を見て思わず感激。


財「似合っとるで(笑)」



うれしかった。


ピアスがもらえたことじゃなくて、財前からプレゼントをもらえたこと。


それが何より嬉しくてしょうがなかった。


にしても、いきなりどうしたんだろう?


まあいいや。

ありがたくもらっとこ!


ありがとう、財前。





「ほんとありがとねっ!」

って財前の方を向いた。


財前はあたしの隣に座っていたから、不意にも目があってしまって…



「……」


財「…前から聞こ思てたんやけど…橋本はさ…」


「…??」


急に真剣な表情になる財前。



財「…好きな奴って、おるん…?」



えっ…。

いきなりの質問に一瞬固まった。


でもね?答えは一つ。


「いる…よ」


“今あたしの隣にいる人”

そんなのが頭の中だけに浮かぶ。



言葉には出せない。


好きなんて、言えるわけないから。



財「そう…なんか」



また沈黙が漂った。



財前はどうしていきなりあたしにそんなことを聞いてきたのだろう。


考え出したら、急に顔が熱くなってきた。



「……」


目のやり場に迷って、ついうつ向いてしまった。



財「……そいつは幸せモンやな」



「…え?」


財「だってそいつ橋本に好かれてるわけやし」


「どっ、どうだかねっ」



どうなんだろね?財前。



財「あと、頼みごとあるねんけど」



「はい?」



財「これから橋本の事は由奈て呼ぶねん。やからそっちも光呼んでほしいやねん」



「う、うん…わかった」



いきなりだけど、呼び方くらい、いいよね。


ひかるひかる…

うん、大丈夫。




「これからは光って呼ぶね」


財「おう」



そしてまたいつもみたく笑って話してい……






ガチャッ



「財前!!!」




現れたのはテニス部のみなさん。


財「部長やないすか。お先お邪魔してます」


て、めっちゃ普通に話してるし!



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