Scar

□…03話
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ちょっと仲良くなって心が許せるだけ。


きっとそうだ。




そうむりやり信じ込ませた。




「じゃ、いくぜー」



ガムを膨らませながら丸井がサーブを打った。





ネットの向こうから、丸井によって放たれたボールが飛んでくる。




それをさっきみたいに返して、またラリーが続く。




不思議だった。



不思議というか…なんとなく思ってしまったことがあった。





このままもう少し続けていたい、と。



自然と思っていた。




けどやっぱり終わりの時はいずれ来てしまうもの。



丸井があたしに声をかけた。




「そろそろ終わりにしようぜー」



「…うん」



あたしと丸井はそのあとコートの隅に並んで座った。



「沙希、お前ほんとにバスケ部かよ?十分テニスいけると思うぜ」


「そりゃあどうも」


汗を拭きながら丸井に微笑みかけた。


「テニスも楽しいだろぃ」


「うん。めっちゃ楽しかった」


「またやろうな」



「しょうがないからまたやってあげるよ」


やれやれ…、と丸井には言ったが、内心嬉しいと思っていないと言ったら嘘になる。




またやりたい。
あたしもそう思ってた。




「じゃあ約束なっ」



と言って右手の小指を差し出す丸井。



なんつーガキなやつなんだ(笑)


と思いつつ、何の躊躇いもなくあたしも右手を出して約束の契りを交わした。





「指切ったっ♪」




やば…


絡んだ指先越しに丸井と目があって、その笑顔に思わずドキンときてしまった。




ってなによ今の…。


このあたしが、男相手にドキドキしてるなんて。




異常だし、重症。




今までこんな気持ちみじんもなかったのに。



何でだろう。





そのとき後ろから人がぬっと現れ、あたしたちに言った。





「お前ら、なにコートん中で雰囲気出してんだよ」



───っ!!




振り返ると、ジャッカルを始めとするテニス部のみんながいた。




「あれ千秋は?」




柳生「教室に帰りましたね」




「え〜っ…」




ブ「てかジャッカル、お前さっきのどういう意味だよっ」




ジ「いや、いい雰囲気出しすぎてんなあって意味だ」




「二人ともそんな馬鹿な事言ってないで…。で、球技大会はどうだったの?」




すると仁王が言った。



仁「決勝は幸村と真田の対決だったぜよ」




「……ふうん」


さすが部長に副部長だ。


さらに仁王は続けた。



仁「結果から言えば優勝は幸村じゃき」



ははは、さすが部長さん。



けどあの人、そんなに強いんだ。




ジ「久しぶりに幸村が本気でやってたぜ」



蓮「“勝利の得られぬ勝負などみじんの価値もない!”などと言っていたが」





柳「どちらももだいぶ苦戦していましたね」




と、口々に言っている。





輪の中に女一人のあたし。



だから、なんとなくだけど距離を置いているけれど、逃げ出すとか、恐怖心なんてものはなかった。






するとさらに後ろから、幸村と真田が現れた。




幸「みんなお疲れ」



ブ「お前らこそ」




爽やかな笑みを見せてみんなに声をかけてきた幸村。


幸「それじゃ、放課後も練習あるから、みんな遅れないでね(黒笑)」



「「は…はい」」




逆らえぬオーラ…。



あたしまではいとか言っちゃったじゃないのよ。


あ、そういえばあたしも部活だ。





また今日も走るのかあ。



ま、いいや。




丸井達だって同じくらい走ってるんだし。



あたしにだってできる。




───




それからあたしは部活に参加して、千秋と一緒に帰った。





約束をしたときの丸井の笑顔が頭から離れなかった。



惹かれてんのはもう
言うまでもなかった。




あたし、丸井のこと…好きになりかけてる……??




指先にはまだあの時の感触と笑顔と声が焼きついている気がした。









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