PLAYERSU
□Happy Halloween
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「とりっく、おあ、とりーと!」
家に来るなりあたしを指してして片言の英語でお菓子を要求するむっくん。
そこにはどこで手に入れたのか知らないが魔女が持つような杖が握られていて、しかもご丁寧に魔法使いの帽子まで被っていた。
さすがにマントまではなかったが、その格好でここまで来たみたいだ。
その格好から連想できるとおり今日はハロウィンなのである。
街に出掛ければあちこちでちらほらハロウィンらしいパンプキンの飾りやかぼちゃのお菓子が売られている。
しかしまぁ、空いたもう片方の手にはいつもみたいにお菓子の袋が握られているにもかかわらずなにが"とりっくおあとりーと"よ。むしろ今日くらいこっちがそう言うべきなんじゃないの?
しかもちゃんと意味わかって使ってるのかも危うい。
おそらくむっくんは"こうやって言っておけば問答無用でお菓子が手に入る!"と目を輝かすようにして思っているに違いない。
「ね、ね、みくちん。とりっくおあとりーと!」
なおも続けてねだるむっくん。あたしはため息をつくがお菓子を渡そうとはしなかった。
「いつもあたしがあげてるんだから、たまにはむっくんからくれたっていいんじゃない?」
「えーだって今日お菓子貰える日なんじゃないの?」
「それじゃむっくんにとっては毎日がハロウィンってことになっちゃうよ」
「違う違う。今日は特別じゃね?」
何が特別なのかと思って聞き返すと、"うーん"と短く唸ってから眠そうな目をしたまま口角を上げた。
「だって今日はホラ、お菓子くれないとイタズラしてもいいんでしょ?」
「いや、それこそ違うんじゃ」
あたしも渋ってなかなかお菓子をあげようとしないでいたら、むっくんが持っていた杖をポケットにしまい、急にあたしと目線を合わせるようにしゃがんできた。それこそおでことおでこがぶつかりそうになるくらい顔を寄せてくる。
思わずそれにびっくりして後ずさりをしようとしたら、後ろに行かせまいとあたしの手を掴んで軽く自分のほうに引いた。
その突然の行動に動揺して言葉が出なくなる。
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