PLAYERSU
□繋いだ体温
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「寒いー…もう、早く来ないかな」
寒空の下、駅前で1人氷室くんのことを待っていた。
氷室くんというのは、アメリカ帰りの帰国子女。初めて見たときにあたしが一目惚れをしてしまい、地道なアタックを続けてやっと付き合うまでに至った。
そして今日はなんといってもクリスマス。
家族や友達とパーティーをしたりするならまだしも、一般的に恋人がいない人から見れば実に妬ましいものだろう。
あたしも去年は"リア充め!"と妬ましく思っていたのだが、今年はなんといっても氷室くんがいる。
あまり言葉や態度にはしないけれど、多少は人生の勝ち組と思ってもいいかなと思う。
早く、会いたい。
1人で待っているのにニヤけてしまう。変人に思われてしまうと思ったが、会うのが楽しみでならなかったのだ。
「なに、ニヤニヤしてるの?」
そこには、約束をしていた氷室くんがいた。あたしを見てクスクス笑っている。
「氷室くん!遅いよ〜…」
「ごめんごめん。急いだんだけど、間に合わなかった」
笑ってはいたけど、ほんの少し息が上がっていた。本当に急いでくれたのだと思い、妙な嬉しさが込み上げる。
だから、あたしも笑顔を見せた。
「大丈夫、だよ?」
「でも、鼻が真っ赤だよ、みく」
「だって寒いしっ」
「やっぱりかなり待たせたみたいだね。ごめん」
と、謝るなりあたしに一歩近づいて、あたしが何かを言う前に、周りにはわからないようにさりげなくだけどあたしのことを抱き締めた。
びっくりしたけど、温かくて、心地よい。街中だったからすぐに離してしまってけれど、今のあたしを火照らせるには十分すぎる氷室くんの行動だった。
自然な流れであたしの手をとって歩き出す。
氷室くんはあたしから見なくても街中を歩けば"あの人かっこいい!"と言われるほどであるから、道行く人が彼を凝視するのはなんだかデートの度に当たり前になっていた。
だけど氷室くんはそれに見向きもしないであたしのことをリードしてくれる。一方的じゃない、ちゃんと大事にされてるって実感する。
だが今日はなんといっても世の中はクリスマスムード一色。
この辺りを歩いている人はやはりカップルが多かった。
だからか、今日は全然すれ違う女の子が氷室くんに見向きもしない。
それはそれでよかったと思う。
大事にしてくれてる、とは感じるけれどなんだかんだ言っても他の女の子からそんなに視線を浴びれば、あたしだって不安になるし、ちょっと嫌だ。
でも今日はそれもナシだ。
「手、冷たいね」
「手が冷たいのは心があったかいからだって言うよね」
「そうだけど、俺の方が手も心もあったかいと思うよ?」
「う…ちょっと否定できない」
「でしょ?」
そんな他愛ない会話をしながら歩く。だんだんとあたしの手も氷室くんみたいに暖まっていくのがわかる。
それは、単に氷室くんの温かい手に握られているからなのか、それとも一緒にいられることの喜びやドキドキからなのかはわからない。いや、おそらくそのどちらもだ。
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