PLAYERSU
□ゼロかヒャクか
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はっきり言って、俺はモテる。
それは自他共に認めている。
でも、これまたはっきり言って、俺は彼女以外の女にはまったくと言っていいほど興味がない。
話しかけられたりすれば話すけど、自分から、っていうのはわりと少ない。
それでも女の子にはよく話しかけられるから、結構相手したりするのは大変である。
彼女だけは、もうまったく別だけど。
その彼女っていうのが、今俺が向かっているクラスの学級委員長なんだけど、なにせまず学年から違うわけで。教室だって遠い。
まあ要するに、1つ上の先輩。
「あ、ちょっといいっスか?みく先輩、教室にいます?」
「みく?ああ、いるいる!おーい、みくー!」
みく先輩の友達が教室にいる先輩を呼んでくれた。
俺に気がつくなり、軽く微笑んで傍まで来る。
「涼太、おはよう」
「もうお昼っスけどね、おはようございます」
「今日は何の用?」
「相変わらず何でここだとそんなに冷めてんスか。会いに来たに決まってるじゃないっスか、みく先輩に」
「そ、それはどうも」
なんつー無愛想。なんつー冷めっぷり。
端から見れば喧嘩してるカップルかあるいは俺が彼女をなだめているみたいだ。
でも、実際そんなことはありえないし、むしろこれが俺たちにとっては普通。
なにせみく先輩には、俺だけしか知らない一面があるからである。
「とりあえずお昼、一緒にどーっスか?」
って満面の笑みで言うと、"仕方ないわねぇ"ってやれやれといった表情で席からお弁当を取ってきた。
そのまま教室を出て二人で並んで歩き出す。向かうのは屋上である。
二人でお昼ご飯を食べるときは大概そこで一緒に食べる。
お昼の屋上は人が居そうに見えて、案外誰もいないから。
その二人っきりになれる時間と空間が、俺にとっては幸せ。きっと、みく先輩にとっても。
屋上に着くと、入り口のすぐ横、いつもの定位置に二人並んで座る。
「今日はいい天気っスね!ほんと、こんな日にお昼一緒に食べられるなんて、マジ最高っスわ!」
「そうだね。わたしも、嬉しい」
照れ笑いしながらそんなふうに言ってくる。さっきの無愛想な態度とはまるで別人みたいである。
「あ、涼太また購買のパンなの?」
「え?あ、うん」
「スポーツする人なんだから、食事くらいちゃんと摂らなきゃ」
って言いながら頼みもしていないのに自分のお弁当からおかずを選んで迷うことなく俺の口元に差し出した。
やば…なにこのギャップ。
いつも二人っきりになるとみく先輩は本当によく甘えてくるし、俺のことを一番に気遣ってくれる。まぁ、そこが好きなんだけど。
毎度のことなんだけど、こういうことされると、俺のほうに余裕なくなる。
「これは、"食べさせてあげるから口開けて?"ってことでいいんスよね?」
「そうだけど…他にあるの?」
「う…ないっス」
やたら素直に受け答えされちゃうもんだから、俺のからかいも本当に無意味になる。
黙ってみく先輩からおかずを貰って"ありがとーございます、先輩"って伝えると俺の大好きな笑顔を見せた。
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