PLAYERSU

□一緒にいたいから
1ページ/3ページ




まさかみくのほうから家に泊まりにこないかとか言われるなんて、思ってもみなかった。

なんせみくは奥手で照れ屋で付き合うまでも苦労した。
だいたいデートは俺から誘うし、気持ちは一方通行なんじゃないかとか思ったこともあったが、みくはなんだかんだちゃんと俺の気持ちに答えてくれるから、通じあってることを実感できる。


だからか、いきなり電話で"明日、ウチに泊まりにこない…?"とか言われたら断るわけがない。
しかも電話越しでもわかるくらい緊張して恥ずかしそうにしてて、うっわマジかわいい、とか考えながら電話の受け答えをした。



で、今日は休日で授業はない。でも当然ながら部活がオフなはずがなくて、部活
を終えてからみくの家に直接向かうことになっていた。

なんだか楽しみすぎて部活にまるで集中出来なかった。先輩や真ちゃんにまで注意される始末だったが。



そんなこんなで一人ウキウキ気分で夕方で日が暮れかけている道を歩いた。ちょうど寒さが増してきた頃だったから、寒かった。でも、あまりそれも感じなかった。




ピンポーン

みくの家のインターホンを押すと、誰か確認することもせずにいきなりドアが開いた。

「か、和成くん…遅いよ〜…」

扉から出てきたのはみく。早速恥ずかしそうな目で俺を見る。

それ、反則だからね?

心中ではそんな風に思いながらも、いつもみたいに笑顔を見せて、

「ごめんな?先輩たち気合い入ってて部活長引いちゃってさ」
「大丈夫だよ、お疲れ様!さ、上がって?」

と、居間に案内してくれた。実はみくの家に上がるなんて初めてで、若干俺のほうも緊張してる。

それよりもみくのほうがめちゃめちゃ緊張してるのがわかった。

別に俺たちは付き合いたてなわけではない。もうかれこれ半年以上経つ。

けど、さすがに緊張しすぎじゃねーか?と思ったのだが、その理由はすぐにわかった。


「おわっ!めっちゃいいにおい」

居間の食卓の上には色とりどりの料理がたくさんあり、ものすごく旨そうな匂いが漂っていた。

「まさか、これ」
「わたしが作ったんだよ。お母さんにも手伝ってもらったけど…」
「すっげーな!食ってもいいのかよこんなに」
「いいに決まってるよ。和成くんの為に作ったんだから…」

俺のため…か。みくもなかなか嬉しいことしてくれる。

緊張してる理由はおそらくこれだろう。

制服の上着を脱いで適当な椅子に腰掛ける。

するとみくも俺の向かい側に座った。これはまるで新婚生活みたいにも思えた。

「いっただっきまーす」
「はい、召し上がれ」

迷うことなくおかずを口に放り込む。

「んっ、うめーな!いやはやさすがだわ」
「こんなの、全然大したことないよ」

口ではそう言っていたが、この量は絶対手間がかかると思った。
みくが料理うまいのは知っていたが、これほどとは考えていなかった。


せいぜい自分のお弁当を自分で作っている程度だと思っていたのだが。

ひょっとして俺の彼女ってめちゃめちゃいい女すぎるんじゃ?
以前誰かに"高尾には勿体ない"と言われたことがあったが、確かにちょっと勿体ねーかも……。



……なーんて、そんなこと考えること自体馬鹿馬鹿しいよな。

我ながら自信過剰かもしれないが、みくと付き合えるのは俺だけだとも思っているから。

ただのおごりと思われたって構いやしない。他の誰でもない、俺しかいないと思った。

そんな風に思える理由は一言ではとてもじゃないけど表せない。

でも、なんつーか…お互いに通じあうものとかをすごく感じ取れるんだよな。

これ、なんていうのかわかんないけど、やっぱり俺の彼女はみくしか考えられない。

みくの作った食事を食べて、普段と変わらない会話をしながら過ごし、食べ終わった頃に急にみくが"さてと"と席を立って再び台所へ向かった。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ