PLAYERSU
□未来の約束事
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それよりもあたしは高尾君の好きな人が誰なのか気になった。
やっぱり自分の好きな人に好きな人がいるとなると、聞きたくないようで実はとても聞きたくなってしまうもの。
あたしは意を決して問い詰める。
「……誰が、好きなの?」
「おっ…まえには、か…カンケーねーじゃん…」
「なにそれ、ヒドイ」
「あーえっと…そうじゃなくって!」
なにやら先ほどから様子がおかしい高尾君。
わたしも、"関係ない"と言われてショックを受けるのではないかと自分自身でも思っていたのに、意外と平気なのには我ながら驚いた。
「…ごめん、余計な詮索だったかな」
「違うんだよ、みく」
なにが違うのかわけがわからなくなった。反応から見て好きな人がいることはもうほぼ間違いないのに、それを否定しようというのか。
でもやはり、こんなに高尾君が動揺するということは、言えない理由でもあるのだろう。
「言いたくないならそれでいいんだ」
そう残念そうにつぶやいて、これ以上聞いても迷惑だろうと思い席に戻ろうとした。
「ちょっ!待てよ!」
背を向けたら急に後ろから手を掴まれてその動きを止められる。引き止められたことにも驚きだったが、何よりちゃっかり高尾君に手を握られているという事実に内心ものすごく揺らいだ。
「なっ…なに?」
「言えないわけがあんだよ」
「……わけって?」
「今は、まだそれすら言えない」
…それすら言えないって!
思わず吹き出してしまいそうになる。
高尾君はいつもそう。調子づいてあれこれ自信満々に言うくせに突然こうなんというか…わけのわからないことを言う。
そんなところも全部よく見てきたし、そこも含めて好きなのだけど、やっぱり笑ってしまう。
あたしは振り返ってもう一度高尾君を見つめる。そのときの彼の顔はどこか不安そうで、でも何かを訴えかけるようで。
やっぱりあたしの好きな彼のままだとふと思った。
「でも、言えるようになったら、ちゃんと言うから、だから」
言葉を返さずにただ高尾君を見つめたままあたしは笑顔を作って頷いた。
掴まれた手によって共有した体温。高尾君のその先の言葉は何かの誓いのような気がした。
end.
12/11/02