PLAYERSU

□素直になれない
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「今朝の話だけど」
「??」
「みくは僕に1人の時間が欲しくないのか、と聞いたね」
「うん。そんなこと考えなくていいって言ってくれたけど」
「逆に聞きたいんだけど、みくは僕といる時間が欲しくはないのか」


唐突に聞かれ、たじたじとしてしまう。からかっているのかもとも考えたが、どうも真剣らしかった。

赤司くんはそんな風に考えなくていいって言ってくれたけど、でもやっぱりどうしても赤司くんの邪魔をしたくないと思ってしまうし、わがままは言えないと思い、ついこう言ってしまった。


「欲しくないわけじゃないけど、赤司くんの障害にはなりたくない」
「なぜ僕にそんなに気を使う?」

それはやっぱり、赤司くんを大切に思うが故なのに。彼はちょっと不機嫌なのかわからないけど、いつもより声色が低くてわずかに怯む。

「だって…わたしばっかりわがまま言ってたら、迷惑でしょ」

今朝と同じような感じの受け答えをすると、不意に赤司くんがわたしの顔を横から覗き込んだ。

いきなり目が合って、しばし動揺する。


「僕のことをそんなに大事に思うのか、みくは」

相変わらず赤司くんはわたしのことを見透かしたように言う。

実際間違ったことなんて少しも言ってない。図星だから、何も言えなかった。

小さくため息をついて続けた。

「僕も同じ、だからこそ言わせてもらう。僕はそんな風に気を使われたところで嬉しくない」



こういったストレートな言動は普段から誰に対してもなのかわたしだからなのかはわからないけれど、当然みたいな顔をしているから、これが赤司くんなのだと本能的に悟る。

わかってても、そんな風に言われるなんて考えてもいなくて、正直なところショックを受けた。

だけど、俯いていたら、赤司くんは頭を優しく撫でるようにしてもう一度わたしの顔を覗き込む。


「僕の前では、もっと素直でいてほしい」


はっとして彼のことを見つめたら、さっきとは違う温かい目をしていた。

不覚にもそんな彼の表情を"好き"と思ってしまった。


「…わたし、赤司くんの前だとどうしても強がっちゃうんだよね…自分でもわかってた」
「そういう見栄も必要ない。僕の前では弱い所を見せたって構わない。そこも好きなんだから」

さらりと、端的に好きと言う。でも、それは決して軽いものなんかじゃなくて、そんな短いフレーズに赤司くんの本気が感じられた。

まわりくどい言い方なんてしないでわたしに対してまっすぐに気持ちを伝えてきた。

すごいと思うほかなかった。わたしなんて心の中で思うだけで精一杯だったのに。本当はわたしはどうしたかったのか。

でも、言葉にしないと伝わらない。赤司くんはわたしのそんな素直な言葉を求めているのだと感じた。

そんな態度にだんだんと応じようとするわたしがいた。


「…わがままでもいいってこと?」
「僕にとってはそれでいてちょうどいいさ」
「……じゃあ、赤司くん」

遠慮がちに隣に座る彼の手を握って、目をそらさずに言う。



「今日はもう少しだけ……赤司くんと一緒に居たい。…ううん、本当はいつも、一緒に居たいの。赤司くんのこと、好きだから…」


ずっと思ってきた本音が口をついて出た。恥ずかしくて思わず赤面すると、彼はにっこり笑ってわたしの手を握り返した。



「上出来。僕もみくのことが大好きだよ」


そう言われれば無意識のうちにドキッとしてしまう。




赤司くんは気持ちを言葉にすることの大切さを教えてくれた。この人と一緒に居たら人間的にも成長できる気がする。何より、たくさんの幸せを感じられると心底思った。

わたしは、いつのまにかこんなにも彼に惚れ込んでいたのだと改めて実感した。



本音を伝え合うだけで、たったそれだけの簡単なことで、わたしは赤司くんのことをまた好きになる。









end.
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