PLAYERSU

□ゼロかヒャクか
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お弁当を食べ終わってひなたぼっこしていたら、

「涼太〜…」

ってぼやきながら隣に座る俺の腕にしがみついて甘えてきた。

「ほんっとみく先輩って人前じゃ素直じゃないっスよね。俺の前じゃこんな甘えん坊のくせに〜」
「違う、恥ずかしいだけなんだよ」

空いてる片手をみく先輩の顔のほうにやって撫でると、嬉しそうに笑ったのがわかった。

あー…かわいいなー…。マジ、襲いたくなるかわいさっス…。

ついつい本音が漏れてしまいそうになったが、下心があるように思われたくなくて、あえて言葉にはしない。それでも彼女はいつだって俺のことよくわかってるんだよな。

「涼太、いま変な妄想したでしょう」
「あれ、よくわかったスね!さすがみく先輩」
「変態、いやらしい」
「そう言われるのもみく先輩になら歓迎っスよ」
「ほんと、涼太ってばいっつもそーゆーことばっかり考えるんだから」

ぶー、と頬を膨らませて上目遣いで俺を睨んでくる。ちなみに腕にしがみついたままだから、もうそんなの、かわいい以外の何物でもなくて、今日はいつにも増して意識から外せない。

甘えられるのには慣れっこなのに、どうもこのみく先輩の切り返しには慣れようったって慣れるのは不可能だ。


もちろんこうやって超甘えてくる彼女は大好き。でも、廊下とかでちょっと冷めた態度とられたり、厳しい目つきで見られるのも嫌いじゃない。俺ってひょっとしてドM?いや、きっとそれはみく先輩だからだし、このギャップというものを俺は熟知しすぎているからだろう。

他の女の子にそんな態度とられたらまず突き放してしまうだろう。だからつまりあれだ、あくまでこの切り返しはみく先輩の好きな所であって別にこういう性格の子が好きなわけじゃない。

もっと簡単に言うと、とにかくみく先輩であればなんだってオッケーなのだ。


「あ、予鈴っスね。…寂しーけど戻らなきゃ」

そう立ち上がろうとしたら、急に強い力で腕を引かれてまた同じ場所に座らされた。

「…先輩?」

横を向いた瞬間に、こちらに向かって顔を寄せる彼女と目が合った。咄嗟に、なんて綺麗な顔立ちをしているんだろうと思ってしまう。

「次の授業、なに?」
「あ、す、数学かな…たぶん」
「じゃあ、いいよね」
「え?なにがっスか?」


するとそのままの至近距離で口角を上げて言った。

「さぼっちゃおう」

あどけない笑顔に思わず紅潮しそうになる。でも、動揺したのを悟られたくなくて、余裕な笑顔を返して、"まぁ、いいですよ"って言うと、子供みたいに喜ぶ。

「あ、でもこれで赤点取ったら責任とってくださいね?」
「大丈夫よ。一年生のこの時期の数学なんてまだまだ易しいほうだもの」
「俺にとっちゃんなことないっスよぉ!」
「あ、わかった。責任とらせるとかいうのを口実にわたしに何かやらせようとしてるでしょう、やっぱり変態だわ」
「ち、違うっスから!!」


クスクス笑うみく先輩。
それにつられて俺も笑った。

こういうときにいつも思う。細かいことはどうだっていい。俺だけに見せるこの笑顔を、もっとこの先も見ていたいと。


この気持ちもきっとみく先輩には見透かされているような、そんな気がする。




end.
12/12/07
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