PLAYERSU

□一緒にいたいから
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「みく?どーしたー?」
「ん、ちょっと待っててね」

俺にそう告げると台所から新しい皿に乗ったものを持ってきた。

それはなんとケーキだった。上には"HAPPY BIRTHDAY"と書かれたチョコレートが乗っている。

「和成くん。1日早いけどお誕生日おめでとう」

恥ずかしそうに、でもはっきりと。
このたくさんの食事やなんかも、全部俺の誕生日の為だということに気がついた。

「ありがとな!本っ当嬉しい!つか、ケーキもみくが作ったのか?」
「うん。初めてだから、うまくできたかわからないんたけど」
「うまいに決まってんじゃん!」
「あはは、食べる前にそんなに期待しないでってば」

とかなんとか言いつつも、そのケーキはお店で売っているものに劣らないくらい美味しくて、俺の腹を満たす。


でも、何故1日早くにしたのだろうか。明日も今日と同じで午後練だし、試合が近いわけでもないから、その気になればいつでもみくの家に来れるのに。

聞けば、理由は2つあるそうで。


1つは、一番に俺の誕生日を祝いたかったこと。

明日に来るとしてもどうしたって練習後になってしまう。みく曰く、部活で何かしら祝ってもらえると思うから、そのあとになっちゃうのが嫌だったらしい。なんてかわいいこと言ってくれるんだ、こいつは。

ちなみに、1日早いのはサプライズ的な意味合いもあったらしく、2番手に祝うとなるとそれもできなくなってしまうみたいなことをぼやいていた。


そして理由の2つ目は…なんだかガキみたいな理由になるとみくも言っていたが、日付が変わって、誕生日を迎えるその瞬間に、一緒にいたかったから。

たからわざわざ泊まりに来てと言ったらしい。これまた嬉しすぎてテンションが上がる。

まさかみくが俺の誕生日のためにここまでしてくれるなんて思ってなくて、食事を終えてからいつになく俺はみくにベタベタしてしまう。


「みく、ご飯、おいしかった。また作ってな?」
「っき、気が向いたら作る…」
「まったまた〜、ツンデレなんだから」
「…か、からかわないでよ…恥ずかしい…」

そんなみくを見て、向かい側に座るのをやめて隣の椅子へと移る。

こうしたほうがみくのずっと近くにいる気がして、気分がよかった。

「今日はありがとなーほんとに」
「喜んでもらえて、よかった」
「つか、彼女にこんなことしてもらえて喜ばねー奴なんかいねーよ」
「そっか、そうだよね」

へへ、と照れ臭そうに笑う。その笑顔にやられて、言葉が出なくなる。

それを見かねたのかそうでないのかわからないが、みくが急に隣に座る俺のほうにパッと顔を向けて言った。

「来年も、再来年も、ずっとこうやって和成くんの誕生日を祝っていたいな」

その言葉に、俺は迷うことなく返した。


「そんなの、当たり前っしょ!」

みくは安心したような笑みを見せた。
そして空気が一転して変わる。和やかな雰囲気から、ドラマであるようなラブシーンを想像させる空気になる。

俺は、その空気に従うような行動をとる。

こちらに向いている顔がやけに色っぽく見えて、そのままゆっくりと、唇を重ねようとした。

みくもそれを察したらしく、軽く目を瞑っていた。が、俺は寸前でそれをやめた。

「どうしたの?」
「や、なんつーか…」

止めてしまった。いつもなら難なく"俺から"してみせるのに。でも、自分でも制御が利かないのはよくないとも思った。したいと思ってすぐ手が出るのはよくないクセだ、とわかってはいるのだけれど。

「すぐしたくなる癖、よくないと思ってさ」
「そんなの気にしないでいいのに」

そう言われ、ふとある考えを思い付いてしまった。

「じゃあ、今日はみくからして」
「へ?」
「ほら俺明日誕生日だし。たまにはそっちからでもいいんじゃねーかなーって」

たまにはどころじゃない。実はみくの方からキスしてくれたことなんてない。だから、これを機に積極性が増したりなんかしないかなぁと考えた。そう簡単に応じてくれるとは思っていなかったのだが、案外みくはあっさりとそれに頷いた。


うわ、されるのってめっちゃ緊張するんだな。不意うちならまだしも、すると言われてからされるのはこんなにドキドキするものだったのか。初めて知った。


みくは遠慮がちに、でもきっちりと、俺の唇に自分のを重ね合わせてくる。

正直な感想、めちゃめちゃ上手くてちょっとこっちに余裕がなかった。

すぐに唇を離すと、照れ臭そうに視線を落とした。

「き、緊張した……」
「それ、俺もだわ」

本当に付き合いたてみたいでちょっと笑ってしまう。

でも、いつまでもこういう気持ちを忘れないことは大切なことだと思う。

一緒にいることが当たり前で、それが日常で。それでいいんだけどやっぱり強く"好き"と思う気持ちが大切。

俺はバカで鈍感だって言われがちだけど、そういう大事なことは自分なりにわかってるつもり。


改めて強く"好き"を感じた俺は、そんなみくを強く抱き締めた。

「あー俺、マジで幸せだ」
「わたしも幸せだよ?ありがとね」
「俺のほうこそ、サンキューな」


気持ちは一方通行だとか、考えたりすることもあるけれど、やっぱり思いは通じ合えてるって、心底感じた。



これが俺たちの幸せで、俺たちの大切な日々。







end.
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