PLAYERSU
□見下ろせばなんと麗しい
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体育館の倉庫に閉じ込められた。
しかも、あの赤司くんと二人きり。
何故こんなことになったのかというと、発端は本当に些細なことで、担任の体育教師による頼まれ事を済ましにきただけだった。
倉庫の備品の数量の確認程度の仕事だったのだが、これが意外と時間がかかった。
こういうのは普通、体育委員の仕事のはずなのに、偶然そこに居合わせたわたしと赤司くんに押し付けるようにして仕事を任せてきた担任に文句の一つでも言ってやりたい気分だった。
でも、赤司くんはそんな文句も言わずにテキパキと任された仕事をこなしていく。
テスト週間ということもあって、すぐ外の体育館からはいつものように部活をやっている音は聞こえてこない。
だいたい、テスト週間にこんなことをやらせること自体おかしいんじゃないか。赤司くんはともかく、わたしはテスト勉強というものを真面目にやらなければろくな点数も取れないのだから。それは自覚済みである。
そんなときだったからか、先生もきっとここに人がいるなんて思ってもいなかったのだろう。
備品の整理も済ませて帰ろうとしたら、どうしたわけか、扉の鍵が閉められていたのだ。
そして、今に至る。
「あ…赤司くん、どうする…?」
「どうするもなにも、どうしようもないだろう。開くのを待つしかない」
閉じ込められたという今の状況に、内心ちょっと焦っているわたしとは対照的に、赤司くんは気味が悪いくらい冷静だった。
仕事を任せた張本人、担任の教師が気付いてやってくるかもしれないと思ったが、生憎わたしたちの担任はそこまで気の回る先生ではない。
わたしも赤司くんもそれをなんとなくわかっていたから、どうしようもないことを理解できていた。
だとしても、さすがに今の状況はまずすぎやしないだろうか。
赤司くんと二人きり、というのもそうだが、ヘタをすればここから出られるのは明日になってしまうかもしれないということが懸念された。
外との連絡手段となりうる携帯電話も、かばんごと教室に置きっぱなしである。赤司くんもそれはわたしと同様であるみたいだった。
そんなこんなでもうここにきてかれこれ3時間が経とうとしていた。時間だけは、手元の腕時計で確認できた。
時刻的にはもう夕方の6時。真冬のためもう既に日は沈んでいる。倉庫には、ほんの小さな灯りがあって、その薄明かりだけが、わたしたちを照らし出していた。
「お母さんとか、心配してそうだなぁ…。赤司くんは、大丈夫なの?」
「家のことなら僕は問題ない」
「そっか。ならよかった。ああ、今日のこと、なんて親に説明しよう…」
そう呟くと、赤司くんはさらりととんでもないような、まるで思わせ振りのような言葉を発した。
「僕の部屋に泊まったことにすれば良い。それなら問題ないはずだ」
問題ないなんてよくもまあ断言できたものである。
でもたしかに、そう説明すれば、いい顔はされないかもしれないが、一応真っ当で納得させられるような理由がつけられる。
でも、それは赤司くんが彼氏であるような言い方になる。たとえ誤魔化すためとはいえ、少し気が引けた。
それでも彼は動じない。そんなこと眼中にもないのだろうか。なんだろう、切ない気分になる。
不安や期待、疑いの念を持って彼を見ても、彼のことなど理解できなかった。なんて、読めないひとだろうか。
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