PLAYERSU
□見下ろせばなんと麗しい
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「ん〜…寒い…」
さすが真冬の体育倉庫。暖房なんてこんな場所についているはすがなく、寒さだけが襲いかかってくるようだった。
制服のスカートからむき出しの生足を抱え込むようにして壁際に座り込んだ。
すると、わたしのそんな様子を見かねたのか、赤司くんがそばに寄ってきて、正面に屈むようにして、自分の制服の上着をわたしの背中に回して羽織らせた。
全身が、赤司くんに包まれているような不思議な感覚に陥る。
「悪いよ。それじゃ、赤司くんが寒いでしょ…」
「僕のことは、気にしないでいい」
普段よりも格段に近い距離から話されると、意識してしまう。彼のことしか考えられなくなる。まるで、それを意図しているかのような、彼の行動。
その予想は、やがて確信へと変わっていく。
「そのかわり」
付け足すように赤司くんは言った。
「僕がそばにいることに、文句はないね?」
その言葉は、なにか別の、もっと深い意味を暗示しているようにも思えた。
わたしは、黙って頷く。
「そばに、いて」
その言葉とほぼ同時だった。赤司くんはわたしの両足の間に入り込んで後ろの壁に手をつきながら、わたしの顔にグッと自分の顔を近づけてきた。
突然のことでびっくりしたけれど、拒めなかった。いや、拒まなかっただけなのかもしれない。
心のどこかでは、わたしはきっと赤司くんに淡い期待を抱いていたのだろうから。
きっとそれは、彼も気づいていたにちがいない。
そんなことを考えているうちに、赤司くんの唇がわたしの唇と重なったのがわかった。そこで、細かいこととか考える以前に理性がぶっ飛んだ気がした。
赤司くんの唇は、こんなに寒い中でもなぜかとてもあたたかくて、心地よい。正直な感想はそんなところだった。
空いた手で握られた片手も、あたたかかった。
「赤司くんの手、すごくあったかい」
「みくの手が冷えきってるだけさ。でも今、ちょっとだけ上がったみたい」
"僕のせい?"とかいたずらに笑う。その笑みの中にも彼独特の余裕な態度というか、ありとあらゆるものを上から見下ろすような、そんな表情が見え隠れしているような気がしてならなかった。
正直なところ、わたしはそんな赤司くんの見下す表情は嫌いじゃなかった。でも、それを崩してみたいとも思ってきた。
「赤司くんは…いつもそうやってわたしを見下すんだね。嫌んなっちゃう」
本心とは真逆のことを言ってみても、彼はそれすら見透かしたように微笑む。
それに対する苛立ちも、隠しきれなかった。
わたしは、咄嗟に顔の横にある赤司くんの腕の手首を握って、もう片方の手は彼の肩に遣って、一気に力をこめて彼を押し倒した。
その勢いで、肩に羽織っていた赤司くんの制服の上着が落ちる。
それを気に留めることもなく、ただ、赤司くんを見下ろしていた。
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