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□海常高校の黄瀬涼太
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高校一年、春。




今年高校生になってから、あたしの身の回りに変わった光景が見られるようになった。


お、また走ってる。


自室の窓から見える視線の先には、あのモデルで有名な黄瀬涼太がいた。


目立つ金髪。背も高くて、遠くから見てもすぐにわかる。休日になるといつもこのあたりをランニングしているのをよく見かけるようになった。

今年からここらへんの高校に入学したと風の噂で聞いたけど、本当だったみたい。


あたしの学校の友達は、"もしどこかで会ったりしたらどうしよーっ!サインとか貰えるかなぁ?"って騒いでいたけど、あたしは特にこれといって興味がなかった。


どうせ、会うわけがないと思っていたし。



…けれどこれは一体どうしたことか。
休日の度に見かけるだなんて考えてもいなかった。


最初は、この閑静な住宅街に人気モデルというあまりに不釣り合いな光景に目を疑っていたのだが、今はそれも慣れてきて、こうして陰から見ているというわけだ。


にしても、モデルのあんな真剣な顔なんて、そうそう見られるものではないと思う。


別に面白がっているわけじゃない。そういう目的で彼を見ているなら自分でも人として最低だと思う。


ただ、純粋にそれがすごいと思っただけ。人が、真剣に何かをするということが。


なんかますます、彼は遠い遠い存在のような気がした。



すぐそこにいるのになぁ……。


そう考えたところで、黄瀬くんがその場で休憩に入った。一度足を止めて、ストレッチ。


そんな健気に頑張る姿を見て、あたしの中で何かが変わった。

別に、距離を縮めたいとか、そんなんじゃなくて、単純に"頑張って"と伝えたくなったのだ。


あたしは部屋から飛び出して、外に向かった。





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