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□君にラッキーアイテムを
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そのとき緑間くんがテーピングをきっちり巻いたその手でかばんをガサゴソと漁って何かを取り出した。


何だろうと思って見ていたら、緑間くんは淡いブルーのリボンの髪飾りを取り出して、わたしに差し出したのだ。


明らかに女物である。彼の持っているクロスとは反対に目立つような花柄ではなく、全体が綺麗なパステルカラーで縁が濃い青になっている髪飾り。




「かわいい…!これ、どうしたの」


すると緑間くんは眼鏡をクイッと上げながら言った。


「フン…今日のお前のラッキーアイテムなのだよ」


「えっ!わたしの?」


「ああ」



相変わらず無表情のまま言う。

どうやら今日は気分がいいみたいだ。だから、ラッキーアイテムを持ってきてくれたのだろう。



「ありがとう!でもよくこんな女物の髪飾り持ってたね」


さては元カノのとか?と一瞬だけ疑ってしまったのだが緑間くんに限ってそれはないと思った。



「探すのにずいぶんと手間がかかったが。家中探して、やっと見つけたのだよ。おかけで朝は大忙しだ」


「じゃあもしかして、今日時間がなかったのはそのせい?」


わたしのせいだと思って、申し訳なくなった。

だってわたし、おは朝そもそも信じてないのに。



「そうなのだよ、みく」


「やっぱり。ごめんね?」


緑間くんはわたしのせいだと言ったが、そのわりに迷惑そうな顔をしていなかった。


「フン…別に気にしてないのだよ」


「でも、わたしがおは朝全然信じてないことも知ってるのに、何で」


すると緑間くんは迷うことなく即答した。



「お前が信じている信じてないは関係ない。俺は自分がそうしたいからそうしているだけだ」



いつだって彼はそうだ。

自分のやりたいように信念を貫き通している。自分の為に、そしてわたしの為にも。

そういうところが好きだった。



素直じゃないこともわかってる。だからたまに、緑間くんの考えていることがわからなくなるときがある。


でも、大切なことはちゃんと言葉にしてくれる。




「何より、ラッキーアイテムがないせいでお前に死なれでもしたら、イヤなのだよ」


「緑間くん……」


さっきまで無愛想だった緑間くんの顔が、一気に赤くなるのがわかった。

大切なことはちゃんと言葉にしてくれるとは言ったけど、やはりそれでも恥ずかしがることはあるみたい。



わたしがもう一度"ありがとう"と微笑むと、持ってきた髪飾りをわたしに握らせて、


「つ…つけたら似合うと思う…のだよ」


さっきよりも赤面しながら言うもんだから、わたしのほうまで照れ臭くなってしまった。


「か、顔真っ赤だよ?緑間くん」

「…うるさいのだよ」


そう言いながらわたしの頭をポンポンと叩いた。

何のつもりかはわからないけどわたしは、彼がわたしにしてくれるその仕草が大好きだった。






end.
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