PLAYERSU

□初めてを君に
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不意に、ふとかっこいいと思った。顔とかスタイルとかそれもそうなのだけれど、なんというか…身体全体から沸き上がるオーラのようなものが、あたしを虜にしている気がした。

ああ、好きになるということはきっとこういうことなのだろう。


たった今告白したのに、その後すぐに好きを再認識することになるなんて思ってもみなかった。


「けどまー、初めては誰だって躊躇うモンだからなー」

あたしが聞いているのか聞いていないのかそんなのも気に留めずに話し続けている。


余裕な笑み。見下されている気がした。キスなんてできるわけ、ないと。


あたしは、そんな高尾くんが好きで、彼のことが、欲しくて。


だから、彼が言っていることに間違いなんてなくて、全部が図星だった。やっぱりみんなわかっていたみたいだった。



そういうことに苛立ちは感じなかった。見透かされてもそれはもう仕方のないことだと割り切っていたから。


だから、己の本能に従うままに高尾くんとの距離を自分から詰めて、両手を彼の顔に添える。


そしてそのまま、触れ合うだけのキスをした。あたしの初めてのキスを、彼にあげた。


びっくりしたのはおそらく高尾くんの方だった。


「……っで、出来るわけないって…思ってた、でしょ……」


高尾くんはびっくりしてポカンとしていた。


「あたしだって、これくらいなんてこと……な……」


「みくちゃんって…本当強がりなのなー」


一瞬だけ笑ったと思ったら、いきなり高尾くんがあたしの手を強い力で引いて、その勢いで抱きしめられた。


もう、頭がついていかない。だけど、高尾くんは言う。



「つか、そんなことされたら俺の方が我慢出来なくなる」



さっきまで、余裕な表情しかしていなかったのに、どうしたわけか高尾くんの腕は震えていた。


「っ…情けねぇ」


「…どうしたの…?」


「キスされたくらいで動揺するなんて、ちょっともう今の顔見せらんねーわ、ハハ」



と、苦笑いなのかわからないけれど、笑った。

でも、そのときに抱きしめる力がちょっと強くなって、"あたし、高尾くんに抱きしめられてる"ということを強く意識した。



高尾くん、こんなことするなんてもしかして、あたしのこと少しは脈ありだったりとかするのかな。



「ねぇ、高尾くんは…あたしのこと、す…好き……?」


「好きだよ」


即答された。まさかこんなふうに返ってくるとは思っていなくて、はっとする。


うそ…高尾くんが、あたしを?

信じられないでいたら、さらに高尾くんは言う。


「好きじゃなかったら、こんなことしねーよ」


あたしのことを一旦離して、目を見てはっきりと、でもどこか恥ずかしそうに言うから、こっちまで恥ずかしい。



「ったく、付き合って欲しいのは、俺の方だよ、みくちゃん」


「っ、ほんとに?」


「マジだっての!恥ずかしいからあんま言わせんなよ…」


耐え切れなくなったのか、彼のほうが顔を背けた。


「嬉しい……」


あたしが笑うと、高尾くんも笑った。やっと、通じ合えたと思った。


この瞬間をずっと待ち侘びていた気がする。



「高尾くん?」


「?」


「あたしが、もし…さっきキスをしてなかったら、どうしてた?」


もしもの話。あたしがあのとき高尾くんを非情な人だと認識し直してここから逃げ出していたなら。

彼は、どうしていたのだろう。



そんな疑問に、躊躇なく答えた。



「多分、俺からしてたと思う」


「じゃ、じゃあ…あたしが逃げ出してたら?」



すると、"だから"と云いながらあたしに一歩詰め寄る。


「俺が逃がすわけないじゃん?」




そういたずらに笑うと高尾くんはあたしの返答を待たずに、優しく、でもちょっと強引に、深い口付けをした。


逃がすわけがない。そう言っていたけど、あたしだって、逃げるわけがなかったんだ。


だから、その唇を必死に受け止めた。


その唇から、気持ちを感じ取れる気がした。というより、感じ取りたいと思った。


もっと、好きだって感じたい。だから、あたしも言葉にするんだ。


想いを通じ合わせるって、きっとそういうことなんだと思うから、だから。


「んっ……高尾くん、好き…」


「俺も、好き」



言葉を紡いで想いを伝える事。それを身体で表現する事。

高尾くんの言う通り、どちらにしたってさして変わりはないのかもしれない。



好きという気持ちを伝えることに、変わりはないのだから。






end.
13/01/22
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