PLAYERSU
□2人でなら大丈夫
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あるとき、俺が教室で1人で日直の仕事をしていたとき。
ガラガラッ
唐突に扉が開いて、見るとそこにはみくがいた。なんという偶然。
しかし、
ガラガラッ ピシャリ
閉められた。
って、
「ちょっ!みく!?」
と、咄嗟に言うともう一度今度は少しずつ扉を開けたみく。
「〜…俺のこと避けてるんスか?まぁそーっスよね。俺と関わるとろくなことがないって言ってたし」
やや自嘲気味で言うと、みくはグルッと後ろを向いてその場を立ち去ろうとした。
「待って」
そんなみくの手首を掴んでそれを引き止める。
「…?」
「何で、俺が他の女の子たちと一緒にいるとき、あんな寂しい顔してんの?」
「…え?何、言ってるの?そんな顔してな……」
「俺が気付いてないとでも思った?」
すると黙るみく。してししばらく沈黙していたと思ったら、なにかぽつりと呟いた。
「え?」
「だから、黄瀬くんはもうちょっと、鈍感なのかと思ってた……」
意外と周りのこと見えてるんだ、なんて言いながらぽつりぽつりと言う。
俺は思うままに掴んでいた手を更に引いて抱きとめる形でみくのことを後ろから抱きしめた。
「きっ…黄瀬くん…!?」
「このまま聞いて?」
「待って………」
待たない、と呟いてみくに思った通りの言葉を投げかける。
「ねぇ、俺と付き合って」
反応は無言だった。やっぱ駄目かと思ったけど、俺にはなんとなくどこからかわからない確信があったから、なんの躊躇いもなく言えた。
「ろくなことないかもしんないスけど、俺がちゃんと守ってみくのこと傷つけさせやしないから」
いつもの人を見下すような言い方じゃなく、本気でみくに伝えようとする。
その姿勢を見てもらいたくて、俺のことちゃんと見てもらいたくて。
もし今フラれたって構いやしない、いつかきっと振り向かせてみせるとまで思ったくらいだ。
それまで俺は、みくのこと好きでいられる自信がある。
「好き、なの?わたしのこと……」
「ああ好きっス。上っ面の気持ちなんかじゃねーよ」
普通の女の子はみんな俺と繋がりを持ちたがるのに、こんなにはっきりと自分に関わるなって言われたのなんて初めてで、俺にとってはもう未知の感覚で。
だからこそ、惹かれたんだ。俺にとってみくは特別以外の何物でもない。
「……離して」
「嫌っスわ。みくの気持ちを聞くまでは」
「お願い、黄瀬くん」
その声は弱くてか細くて、だめだ……怯んだ俺はその一言で腕をほどいてしまった。
好きな子の言葉って自分にとってはこんなにも絶大な効果を持つだなんて、生まれて初めて知った。
みくはそのまま俺に何か言うのかと思いきや、くるっと向きを変えて俺と向き合った。
その顔は真っ赤で俺と目線を合わせようとしなかった。
すると次の瞬間。
みくが俺に一歩近づいたと思ったら、その手を俺の背中に回してゆるく、だけどしっかりと抱きしめた。
「………えっ?えっ?」
「………と………ない……」
抱きつきながら何かぽつぽつと言っているが、何せ声が小さい。
「みく?」
「だっ…から……っ…!む、向き合わなきゃ、抱きしめ返せないじゃない……!」
え……………。
抱きしめ?返せない?
思わず言葉に詰まる。
「黄瀬くん………?何か言って……恥ずかしいんだから」
「えっあ…ごめん。まさか、みくのほうからそんなことしてくれるなんて思ってなくて……」
「わたしもまさか、こんなにも黄瀬くんのことす…好きになるなんて、思ってなかった……」
それを聞いた瞬間に俺はもう一度みくのことを抱きしめた。
こういうのみくも初めてなのかな?わずかに身体が震えてた。だから、俺は強く抱きしめ返した。
「俺に関わるとろくなことないんじゃないんスか?」
悪戯な笑みを見せたら、恥ずかしそうにしながら返された。
「黄瀬くんが守ってくれるんでしょう?」
「……もちろん。当たり前っスよ?」
そう言うとみくは照れた笑顔を見せた。
不覚にもその可愛さに一瞬頭が真っ白になった。
こんな感情になったことなんかない。
俺は、みくのあの寂しそうな目つきを見てから、こんな目はもうしてほしくないと思った。
そんな目をしないで、俺のこと暖かい目で見て欲しいと思った。
きっとこれからは…………もう心配いらないかな。
みくの中ではきっとまだ付き合うことへの不安とかあるに違いない。
だから、
「みく」
「な、なに」
「大丈夫っスから、俺と居る時はそんな肩に力入れなくていいから安心して?」
ふわっと頭を撫でると、嬉しそうにしてる。
でも、まぁ…肩に力入ってるのは俺の方だったかも。
なにせ、本気で好きになった子と付き合うのとか初めてだし、いつもいつも受け身だったから…。
そう思うと、俺もみくも恋愛においては全然初心者なんだって思った。
不安にまみれてたのは多分、お互い様。
でも、きっとこの先2人でなら……。
みくといると、そう感じずにはいられなくなるんだ。
end.
13/02/20