PLAYERSU
□主役は彼だから
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やっぱりここのお店は落ち着くみたいで、どうもリラックスした表情を見せる黒子くん。
彼の穏やかで優しい表情を見ていると、わたしもなんとなく幸せな気分になる。
好物のバニラシェイクを飲んでいる姿を見て不覚にも可愛いと思ってしまった。
「みくさん」
「え?なっなに?」
まるでわたしの心を読んだかのようなタイミングで話しかけられて、内心動揺してしまいそうになる。
「そんなに見られると……何だか照れます」
「っご、ごめん!なんかつい」
無意識のうちに見つめてしまっていたらしい。
「ちょっと飲みますか?これ」
「え、でも……」
「みくさん前にシェイクはあまり飲まないって言ってましたよね。だから」
そう言うと自分の飲んでいたシェイクをわたしに差し出して、"どうぞ"と言った。
って、つまりこれは…間接キス?
いやいや、躊躇う要素はここにないでしょ、みく!
間接キスどころか…普通にキスくらいしたことだってあるし…でもやっぱり間接キスだってキスのうち…だし…。
そんなことを頭の中で考えていたら、黒子くんが飲んでいたシェイクのストローの先端をわたしの口の中に無理やり押し込んできた。
「んっ!?」
突然の行動に驚いたが勢いでそれをちょっとだけ飲んだ。口の中に甘い味が広がっていく。
「おいしいでしょう?」
たしかに、おいしい。というか、ものすごく甘い。
でもこの味は嫌いじゃなかった。
「おいしい…。でもホント、こういうとこいきなりだよね、黒子くんて」
「そうですか?」
普段は優しいのに、たまにいきなり強引になったり、わたしが想像もしていないことをする。
もう、なんというか…まったく予想のできない人。
だからこそ、わたしは彼に夢中なんだと思う。
「顔赤いですよ」
「く…黒子くんのせいだよ」
するとまた穏やかに笑ってそのシェイクを飲み干した。
そのあとはわりとすぐにお店をあとにしたわたしたち。
「今日は、ありがとうございました」
繁華街を歩きながら黒子くんがわたしにお礼の言葉を述べた。
わたしは知っている。彼がこんな風に1日のお礼を言うときは、たいてい"もう暗くなるし帰ろうか"みたいなことを考えている。
「今日はこのくらいにしますか」
もう夜の7時になろうとしていた。冬だから空はもう暗い。
いつもならわたしも拒むことなくそこでバイバイしているけれど、正直わたしはまだ帰りたくなかった。
まだ黒子くんと一緒にいたかった。
それを伝えるかのようにわたしは彼の手をギュッと握った。
遠慮がちに彼を見据えると、そのわたしの行動が引き金になったのか、急に強い力でわたしの手を引いて、すぐ傍の路地裏に入ったところまで連れて行かれた。
「黒子く……?んぅっ…」
路地裏に入るなりわたしの肩を掴んで建物の壁に押し付けて、何も言わずに深い口付けを浴びせた。
甘い甘い、バニラシェイクの味。とろけそうで、それでいてクセになりそう。そのまま黒子くんに堕ちてしまいそうな、そんな不思議な感覚になる。
路地裏は、わたしたちがさっきまでいた通りとは違って、人もいないし、なぜだか音までそっちと遮断されたような空間。
だからか、わたしと黒子くんのリップ音が遮断されることなくわたしの耳に届く。それだけで、耳が犯されているような気分にすらなる。
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