PLAYERSU
□好きだと言えなくて
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彼女の長くて綺麗な黒髪を梳くように指を走らせると、ビクッと怯えた目つきで僕を見上げる。
その視界を埋めるように唇を塞いだ。
短く喘ぐ声が聞こえればさらに深く口付けをしてそのまま舌を彼女の口内に押し込む。
抵抗しようと手が伸びれば、その手を壁に縫いつけた。
放課後の、しかも部活も終わった後の男子バスケットボール部の部室。
今は部室全体ではなく、1箇所しか電気をつけていないので、少々薄暗い。
やっていることは強引で一方的かもしれないが、ここにやって来たのはみくのほうなのだ。
先に好きだと言ったのも、みくのほう。
だから、こうして抵抗をしているつもりでも、みくは決して本気で抵抗してるわけではない、と思う。
無論、運良く2人きりになれたわけではない。
理由もないのにみくが部室にやってくることなんてないから。
今朝みくに、"今日部活が終わったら、部室で待ってて欲しいんだけど"と言われたからである。
快く承諾してみくがここに来るのを待っていて、そして案の定彼女は僕に好きだと伝えた。
それから、何も言わずにこうしているのが今の状態。
彼女は僕のことをどう思っただろうか。
まだ何一つ、言葉にしていないのに、深く深くそれこそ彼女が溺れてしまいそうになるくらい口付けて。
身体目当てだと思われたかもしれない。そう思われても仕方がない。
でも僕はただ、みくのようにうまく言葉に表現することができなかった。
ただそれだけだった。
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