PLAYERSU

□君が想う以上に。
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「みく〜?」



みくの家に上げてもらって、ノックするのも忘れて部屋に入ると、寝息をたてていた。


「おやすみ中…スか」


つぶやくと、もぞもぞ、と布団の中でみくが動くのがわかった。


「ん……あれぇ…涼太」


「ごめん、起こしちゃったみたいっスね」


「いいよ。練習終わりに寄ってくれたんでしょう?わざわざありがと……」


「どーってことないっス」



いつもよりも全然力ない喋り声。相当やられているなんてのは誰が見てもわかる。

でも、本人は自分がそう見えるだなんて、思っちゃいないんだろう。でも空元気バレバレだった。



みくはその身体を起こそうとしたのだが、無理しないで、と俺が阻止した。


「みんな、ちゃんと部活きてる?」


「何人か熱中症っぽかったけど、一応みんな練習来てるっス。あとはみくがいれば」


「ハハハ…マネージャーなのに自分の体調管理もできないなんてね、笑っちゃう」


「みく、俺らのこと気遣い過ぎ。もっと身体大切にして?」


「ん……涼太」


不意に、みくがそばにいる俺の服の裾を軽く引っ張った。


そのとき、寝込んでいるみくと視線がぶつかり合った。

熱があるからか、顔も赤くてやけに目もやけに色っぽく見えた。

軽く動悸もあって、こんなときにこんなこと考えるなんて不謹慎だと思ったが、正直今のみくは今まで見た中で1番エロいと思った。



「涼太、今何かいやらしいこと考えたでしょ」

「えっ!?いや、別に……」


「はいウソ。涼太、嘘つくとすぐわかるんだから」


「ん…ごめん」



謝りながら手をみくの額に当てがる。今朝よりは少し下がってた。でも、まだ熱かった。


「あんまりわたしに近付くと、風邪、移るよ?」

「それでみくが治るならそれも本望っスよ?」


「……だめ。そんなの」



俺が笑うと照れたのか、また視線をそらした。


すると今度は俺の手に手を伸ばして軽く触れた。

「?どーしたんスか?今日は甘えんぼさんっスね」


「……りょ、涼太の手、冷たくて気持ちいいから…」


生まれたての赤ん坊みたいに、俺の指を力なく握る。

そんな姿も愛おしくて、床に膝をついてみくに身体を寄せた。


「だから、あんまり近付いたら…移っちゃう、から」

僅かに仰け反るみくの手をグイッと引いて、キス寸止めの位置まで顔を寄せると、赤い顔をさらに赤くした。


「平気っスよ、みく?俺、強いから 」


「……っ、とか言って、移っても知らないからね……っ」


するとみくはその先を待ち構えるようにして軽く目を閉じた。

俺もそれに応えるように寸止めだった位置からみくの唇に軽く触れるだけのキスをした。



「なんか、もっと顔赤くなってないっスか?かわいー」


「あんまり茶化すと、怒るよ?」


「怒っても全然怖くないしむしろ可愛いから、みくは」


"もー"って言いながら照れたように笑う。そんなみくが好きだった。




「じゃあ、そろそろ帰るっスね。寂しくなったらいつでも連絡していいっスから!」


デートの別れ際にいつも俺は似たようなことを言う。


そのたびにみくは寂しくなんてならないよってまた笑うんだ。ほんとはすごく寂しくて、1人になるのが嫌なクセに。


………でも、違うか。
本当に1人になりたくないのは俺の方。


みくに会えなくて辛いのは俺の方なんだ。人のこと言えない。




だからこうして今日だって、大好きなみくに会いに来ているんだ。


きっと俺は明日も明後日もこうやって会いたいと思うのだろう。



それはもう、みくが俺を想う以上に強く、強く。





end.
13/06/07
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