PLAYERSU
□好きになっていく
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「チィ…結局こんな時間になっちまったじゃねーか」
「付き合わせてごめんね。ありがとう」
荷物をまとめて花宮君にお礼を言うと、やっぱり不機嫌そうな顔をしていたけれど、"おう"と一言だけ言った。
先に席を立った花宮君は、教室から出ていくと思ったら、急にわたしのほうをふりかえった。
「………」
「………?」
わたしがポカンとした様子で見返すと、小さな声で一言だけつぶやいた。
「お前、帰んねーの?」
「っか、帰る!」
わたしが慌ててガタッと席を立つと、それを見て、わたしに背を向けてなにか言った。
「え?」
「…っから、送ってってやるっつってんだよ」
彼はこちらに顔を一切向けなかった。けど、どんな顔してるかなんてわかった。
また不機嫌そうに、でもちょっとだけ優しい顔。わたしはそうだと思った。
「……あ、ありがと」
彼は、本当は優しい人。わたしの思っていた通りだった。
それがたとえ嘘だとしても、構わないとも思った。
それでも彼のことが好きだったから。
帰り道、隣を歩く花宮君を見て他愛もない話をふる。
「今日教えてくれたり数学のところあるじゃない?ちょっとまだわかんないとこあるんだけど…教えてもらえないかな」
「はぁ?面倒だな。今日はもう無理だから明日な」
「明日!じゃあ明日も勉強付き合ってね!」
「おい、ちょ、待てよ」
「ん?なに?」
わたしが満面の笑みを向けたら、花宮君はため息をついてやれやれと言った表情をした。
文句は言えない。なんせ自分が言ったことなのだから。
明日の放課後もたのしみだな。
わたしが話を振ったとはいえ花宮君のほうからまさか約束を取り付けてくれるだなんて思ってもみなくて、心が踊った。
なんだかんだ、満更でもない顔つきを見せたりもすることに気が付いた。
嬉しくて、もう少し、距離を縮めたくて、わたしはさりげなくほんのちょっとだけ、彼に寄り添って歩いた。
end.
13/07/14