PLAYERSU

□still love you
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何度、彼とキスして、身体を重ねても、あたしには一度も"好き"の言葉なんて言ってくれたことなんか、ない。



………そりゃそうだ。



根本的にあたし達の関係は、間違ってるのかもしれない。




涼太にはちゃんと、彼女がいるんだから。



あたしには何ら恋愛感情なんてない。


あたしも、そう思ってた。



週に多分、2回くらいは会っているあたしたち。


もしかしたら、彼女よりも会っているかもしれない。



でも、最近この関係もつらいものだと思い始めてきた。そばにいられるとしても。



涼太の身体じゃなくて、ココロが欲しい。


でもあたしは、"彼女になれない"。





「フゥーー……」


「ちょっと、俺の部屋で煙草吸うの、やめてって言ったじゃないっスか」



「はぁ、そうだっけ?」



「そっスよ。しかも制服で……そんなんじゃただの不良女子高生にしか見えねーよ?」



「別に…いいじゃない。見た目なんて」



あたしがどうでもよさそうに突き放して、さらに煙草を吹かした。


あたしの身体はそれこそ、もうこれなしじゃ生きていけないんじゃないかと思うくらい、その煙を欲してた。


やめようと思えばやめられたかもしれないけど、何か、あたしの心に燻る何かがわからなくて、モヤモヤして……そう考えれば考えるほど、やめられなくなった。



もう、それはどうでもよくなった。





「ってか、臭いがつくんスよ!洋服とかに!彼女とデートした時とかに前もちょっと言われたんスよね〜、"煙草の臭い、する"って」


「………」



「あのときは、まあうまく誤魔化したっスけどね?……けど……で………」



そのあとも何か話していたけど、あたしの耳はそれを完全に聞いていなかった。





いらいらした。




あたしは、まだ吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けて、椅子から立ち上がって、



ドサッ




ベッドに腰掛けてた涼太をそのまま押し倒した。



そのまま馬乗りになって、涼太の顔の脇に手をついて、見下ろした。



「何スか?いきなり……これから学校なのに朝からしたくなった?」



こんな状況でも動揺しやしない…。

さすが、慣れてると思った。



でもそんなことより、あたしは涼太に言いたいことがあった。




「彼女の話……しないで」



すると、ちょっとだけ驚いた顔をした。



「……え?俺に彼女いるの知ってて俺ら、こうやって一緒にいるんじゃなかったんスか?」



「そうだけど」



「まさか嫉妬?なに、好きになっちゃったんスか?俺のこと」




冗談めいたように言うけれど、否定のしようがなかった。



「恋愛感情なんて、ないっていうのが前提だったじゃないっスか」



涼太の言葉が胸に刺さる。何よりもその言葉を聞くことが辛かった。



まるで、身体の相性が良いっていうだけの理由でしか一緒にいないみたいな言い方。


……たしかに、彼にとってはそうなのかもしれない。



あたしは一人、心の中で何かを理解したような気がした。



あたしはそのまま、一回だけ、触れるくらいの軽いキスをした。





それから、彼の上から降りて、カバンを手に持つ。


「……みく?」




「……もう、会うのやめにしよう、あたしたち」




「…は?」



今度は本当に驚いたように言って、起き上がって、立ち上がって、部屋から出ようとするあたしの手を掴む。



「まさかみく、本当に俺のこと」








その手を強引に振りほどいた。




「みく!」

玄関から外に出て、走って、走って、涼太の家をあとにした。


涼太も追ってはこなかった。


追ってこなくてよかったとも思ったし、どこかで引き止めてほしかったという思いもあった。


けど、諦めをつけるにはやはり、これでよかったと思った。そう思うしかなかった。



そのまま学校に向かったけど、途中で泣きそうになった。



元々あたしと涼太は学校も違うから、もうこれで本当に会う機会もなくなった。





それから、何回か連絡もあったけど、全部無視して、涼太のことは考えないようにしていた。





そうしているうちに涼太に会わない日にも慣れた。



けど、どこか虚無感が残った。






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