PLAYERSU
□触れるだけのキス
1ページ/2ページ
和成って、絶対シスコン。
しょっちゅう妹の話してるし、あの妹からの貰い物だとかの赤いカチューシャは常に携帯してるし。
別に、兄妹仲良しなのはいいんだけど……わからない、なんか嫉妬。
「みく?あのさ」
「なに」
「えっ、何で怒ってんの?」
「別に、怒ってなんかないよ」
そうはいっても完全に苛立った口調で返してしまう。
…いやだ、自分ってば醜い。
そのときもあの赤いカチューシャをしていて、その姿は自分的にはアリだと思うし、そこも好きだけど…
それが妹さんからの貰い物だと思うとそんなもの取っ払って今すぐここで自分の彼女が誰なのか、わからせてあげるような行動をとりたいとまで思ってしまう。
「なーに?そんなムスッとしちゃってさ。なにか気に食わないことでもあったの?」
「だから…そんなんじゃ…」
と言ったところで扉の向こうから今まさに考えていた女の子の声が。
「おにいちゃーん?ちょっと、来てくれないー?」
部屋の外からまた、和成を呼ぶ声。
それを聞いて和成はまたやれやれといった様子を見せながらも、立ち上がった。
「はぁー、ごめんちょっと待っててみく」
そう言われ、わたしは何かに嫌気がさした。
「…待って、行かないで」
思わず服の裾を掴んでいた。
それを見て驚いたように和成は振り返った。
「え、何言って…………うわっ!!」
ドタンッ!
そのまま和成を引っ張って部屋の扉を背に座らせてわたしも距離がなくなるくらい詰め寄る。
トントン
「おにいちゃーん?凄い音したけどどうしたのー大丈夫ー?」
すぐそこの扉の向こうから妹さんの声と、ノックする音が聞こえるけど、気にしない。
びっくりしている和成をよそに、頬に手をやって、目を閉じながら深く口づけた。
「……んっ」
和成も、なんだかんだでそれを拒否したりはしなくて、わたしのキスを受け止めてくれた。
尚も扉の向こうからは妹さんの声がしているというのに。
「んっ…はぁ………今手離せないから、あ、あとで行くよ!」
「……はーい」
和成は扉越しに言うと、部屋の外の音は止み、静かになった。
「急にどうしたんだよ。何かのプレイ??」
冗談混じりに言うけれど、何でわたしがこんなことをしたのかはきっと、気付いてる。
「だって……だってさ、和成」
「うん?」
「和成ってば、最近妹さんの事ばっかりで、わたしのこと二の次じゃん……」
「なに、嫉妬してくれたんだ」
ニヤニヤしながら言い返す。
和成の言うことは間違ってはいないから、ちょっと視線を外しながら小さく頷く。
それにしても、我ながら大胆なことをしたと思う。
こんな…半ば無理やり唇を奪うようなこと。普段だったら絶対にしない。
「…ごめんね、妬かせようとしたわけじゃなくて、いや…別に妬いてくれるんだったら俺的にはスゲー嬉しいんだけどさ、んーなんていうのかな…ハハ、ごめんマジで今ちょっと動揺してて…うまく言えないんだけど」
"みくがいきなりこんなことするから"と意地悪く言うけど、そこには愛すら感じる。
「…あのさ、そのことで怒ってたんでしょ?それはほんとその、ごめん。怒らせるつもりなんてなくて。でもマジで…喜んじゃいけねーのはわかってんだけどやっぱり…チョット嬉しい」
照れたように和成も顔をそむける。実を言うと、こんな表情を見るのは初めてだった。
いつも余裕そうな顔をしているから。こんな和成も新鮮だった。
和成はわたしが嫉妬したことに対して嬉しいと言ってくれたけれど、わたしにとってはそうやって思ってくれることそのものが嬉しかった。
「和成……」
うれしくてつい、優しく、触れるだけのキスをして、笑った。
「にしてもなー、まさかみくが妹に妬くなんてなー」
ニヤニヤとしながらわたしを見る。
「わ、わたしだって、自分で驚いてるんだよ?心狭い……」
「俺は別に、そんな風に思ったりしねーよ。嫉妬することくらい、誰にだってあるだろ」
和成が少し照れくさそうに目をそらしながらそんな風に言った。
それは別に、わたしの自虐を取り消しにする言い訳でもなくて、和成の本心だってわかった。
「俺だって、普段学校とかでもまあまあ妬くことあんだよ?気付いてないと思うけどみく、モテるからさ」
「!?」
「その反応だとやっぱり自覚ねーのな。こうやって俺らが付き合ってても、狙ってるやつとかいやがるから」
そんな人達がいるなんて、これっぽっちも気が付かなかった。
けど、和成は得意気に言った。
「この様子じゃ他のやつにとられる心配もなさそうだしな。つーか渡す気ねーから、覚悟して?」
今度は和成の方からグイッと顔を寄せてきて、三回目の触れるだけのキスをした。
和成だって、モテるくせに。
そうだとしても、わたしだって、他の女の子に渡す気なんて、これっぽっちもないから。
end.
14/03/14