PLAYERSU

□みんなの知らない顔
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「んーでも、まだ納得出来ないって顔してるね」



「そう…かな…」



たしかにまだ若干納得出来ない部分はあった。

わたしがうつむくと、氷室くんの手が頬に伸びてきて、視界を埋めるようにそっとわたしの唇に、キスをした―――





「!?」


唇はすぐに離れたけど、びっくりして気が動転してしまった。


あまりに驚いたため、後ずさった拍子に後ろの机にぶつかり、そのまま後ろに倒れてしまった。


「ひゃっ」


ガタンッッ!!


「大丈夫?」


なんて言いながら、どさくさにまぎれて氷室くんに机に押し倒されてるみたいになっていた。

氷室くんの顔の向こうに天井が見える。でも、視界は埋まりそうなくらい近くて。



どうしよう、ドキドキしてる。



「き、キスなんて…氷室くんにとっては挨拶がわりなの…?だって、向こうじゃキスなんて日常的…じゃん…」



「こんなにされてまだ納得しないって、意地でも張ってるの?」



「は、張ってな……」



すると倒れたわたしにもう一度キスをしてくる。さっきみたいなキス。



「んっ…や」


「ここはアメリカじゃないし、俺だって別に好きな子以外にこんなことするわけないだろ。わかる?」



今ので、なんとなく氷室くんの本気が伝わってきた気がした。

わたしは、観念して黙って頷いた。




「氷室くんが、こんな強引な人だと思わなかった……」


「それ、よく言われるけど、俺ってけっこう欲張りなんだよね」



「も、意外すぎ……。それより、もう、どいてよ……」



「え、どうして?」




なんて、ニコニコしながら言ってくる。


「もう、意地悪!」




氷室くんはクスクスと意地悪く笑うと、わたしの上から退いてわたしの手を引いて起き上がらせてくれた。



「氷室くんって、みんなが思ってる感じと全然違うんだね。本当はすごく…」


「すごく?」



「強引で、意地悪……」



「ハハ、そうかもね。でも、俺のこともっと知りたくなったでしょ?」



そう自意識過剰気味に言う氷室くん。でも、本当に彼の言う通りだった。


氷室くんのこと、もっと知りたい。



みんなの知らない彼の顔を、知りたいと、思ったのだ。


わたしは、うつむき気味に頷く。


すると、ポンポンと頭を撫で付けながら彼は言った。




「それじゃあ、返事を聞かせてくれる?」



キスまでしておいてそんなことをにこやかに聞いてくる。

わたしは、完全に彼の思惑にはまっているなと分かっていた。分かっていたけれど、それでも、構わないと思った―――



「よろしく…おねがいします……」





その強引な口づけに、魅了されてしまっていたから。




end
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