PLAYERS
□本当に好きだったのは
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「今日もお疲れ様!」
「サンキューっス。あれ、神崎さん髪型変えた?似合ってるっスよ」
「そうかな?ありがとう!」
最近俺は思う。
神崎はどう見たって黄瀬のことが好きだ。
たしかに学年だって同じだし、ただ仲良いだけかもしれない。でも、そうには見えなかった。
そして黄瀬の方も神崎のことをずいぶんと気に入ってる様子だった。
軽く舌打ちをして部室へ帰ろうとする。
「笠松先輩!ちょっとだけ1on1しないスか?」
後ろから黄瀬が言ってきたが、俺は振り返ることなく足だけ止めて言った。
「わりぃな黄瀬、今日は帰るわ」
「あっちょっ、笠松せんぱーい?」
"もー"とか言いながらため息をつく黄瀬の声が聞こえる。
こんな私情を部活に持ち込むなんて自分でも信じられない。が、実際それを頭から離すことができなかった。
黄瀬と神崎。
部員とマネージャー。ただそれだけの関係だと思ってきた。
でも以前から噂はあった。黄瀬の方から神崎を口説きにかかっている、としか最初は聞いていなかったが、もう2人は付き合っているんじゃないかともっぱらの噂だ。
だからって…何で神崎なんだよ。
黄瀬のことを好きになる女なんてたくさんいるだろうに。なぜ黄瀬が選ぶのは神崎なんだろうと毎日のように思った。
しかし部室を出ると、待ち構えていたかのように神崎が現れた。
「神崎……どうしたんだ?」
「あの、笠松先輩さっき、なんか様子がおかしかったから…ちょっと気になって」
そのあと付け加えるように言った。
「黄瀬君も心配してました」
その言葉だけ妙にリアルに聞こえて、苛立ちを抑えられなかった。
「知らねぇよ…」
「えっ?」
「俺の前でアイツの名前を出すな!」
そう怒鳴ってからはっとした。
神崎はびっくりして怯えた目を見せた。神崎に対して怒鳴り散らすなんて間違いにもほどがある。つまり、ただの八つ当たりだった。
「…ご…ごめんなさい…わたし…どうしても笠松先輩が心配だったから…」
泣きそうな顔をして俺を見る。そんな顔をしないでほしかった。気持ちがこっちに向いていなくたって、やっぱり悲しそうな顔をされたらつらい。
俺は最低だ。最低なことをした。そう自分を責めて神崎に「悪かった」と小さく告げてその場を去った。
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