PLAYERS
□シューターの心得
1ページ/3ページ
男女バスとも部活が終わり、みんな疲れたーとかファミレス寄ってかねーとかそれぞれ話しながら体育館から出て行く。
もちろん一緒に部活をやっているわけではない。
たまたま男女バスで隣になっただけである。
そして人がいなくなって静かになっていく体育館に今日もゴールネットを揺らす音が響き出す。
「…今日も自主練?緑間君て意外と努力家よねー」
「神崎か。意外とは心外なのだよ」
と、言いながら打つシュートも外すことはない。
「あれ、今日高尾は一緒じゃないの?いつも緑間君の自主練にはなんだかんだ付き合ってるじゃん、アイツは」
「高尾ならついさっきまでそこにいたが、さっき黙って部室に帰ったみたいなのだよ」
「あー、そうなんだ」
緑間君は顔をこちらに向けたり向けなかったりしながらシュート練をしている。
「で、お前は帰らないのか」
「いや〜あたしは帰ったらどうせ寝るだけだからね」
「勉強したらどうだ」
緑間君に眼鏡をクイと上げながら言われると若干イラッとする。
まぁ、頭はいいから勉強に関しては文句1つ言えないのだが。
「いいじゃん勉強よりあたしだってバスケしてる方がいいんだから」
あたしは持ってた女子用のバスケットボールをリングに向かって投げた。
「知ってた?あたしもスリー得意なんだから。そりゃ緑間君に比べたら全然まだまだだけど」
あたしの投げたボールもリングの中に吸い込まれていく。
「ふん」
いつのまにか体育館にはあたしと緑間君の2人しかいなかった。
あたしが話しかけるとそれに受け答えをしつつもシュートを外さない。
実は緑間君はあたしにとっての憧れでもあった。
あたしと同じシューターなのに、この人は格があまりにも違う。でも、だからこそ、もっとそのシュートを見たいと思った。
だからこうしてたびたび緑間君の自主練習にお邪魔しているわけである。
実際迷惑かなぁとも思うけど、それでも緑間君はそういうこと言わないから……言ってくれればいつだってあたしは退散する気でいたのに、言わないからこのままでもいいかなって思ってしまう。
.