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□彼なりの優しさ
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「うー…さむい」



へっぷし、とくしゃみをしてはまたティッシュに手を伸ばす。

これで何枚目か。わざわざ家から持ってきた箱ティッシュがもうすぐ底を尽きようとしていた。



それを見て、またあした新しいの持ってこなくっちゃ、と思うのであった。


なにもない平凡な毎日。






そしてその常備している箱ティッシュは、かさばるので隣の席の人のところに置いているわけなのだが、

そのティッシュが急にわたしの方に返された。




「はい???」



驚いて顔を上げると、そこには呆れた顔をした青峰君がいた。


「はい?じゃねーよ。ここ、俺の席だっつの。何回言えばわかんだよオマエは」


「あっごめんごめん!青峰君てば結構サボってること多いからつい」


「ったく、俺の席は荷物置き場じゃねーんだよ」


「だから、ごめん!」


すると、ため息をついて自分の席に座る。わたしは仕方なくその箱ティッシュは机の中にむりやり押し込むことにした。


「うわーガサツ」


「いいじゃないほっといてよ」


「へーへー」


横からそういう声が飛んでくるのもしばしば。だいたい女の子に向かっていきなり"ガサツ"はないでしょ。




と、プイッと顔をそらしたところでまたしてもへっぷしとくしゃみをした。そしてお決まりの鼻をかんだ。



「くしゃみつらい、寒いしこれだから冬は」


独り言みたいに言うと、それを聞いてか青峰君が超珍しくわたしを心配するような声を漏らした。



「風邪?」


「ん、そうだよ」


「………ふーーん…」


「移すなとか言うんでしょ」


「あたりめーだろ。移されたら困るんだよ」


「大丈夫だよ、移したりしないから」




青峰君の顔を見ないで力なく呟くと、急に机にダン!と勢いよく缶の飲み物が置かれた。


「!?」


見るとそれはホットココア。


「え、青峰君ついに頭やられた?」


「ちげーよバカ。いいからそれ、やるよ。まだあったけぇはずだから」




青峰君の信じがたい行動にびっくりしながらも、それを手にとって頬に当てる。



「ほんと、あったかい…」


「100円な」


「……奢りじゃないの?」


「俺がタダでやると思ってんのか」


「うん」



迷わず笑顔で頷くと、また青峰君は呆れた顔をして言った。





「………ったく、今日だけだからな」





そのとき、ほんのちょっぴり照れたような顔をしていたことは、気付かないフリをしてあげた。











end.
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