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□優しいけど意地悪
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今日は雨でも降るんじゃないか。



そう思わせるくらい今日の彼はいやに積極的だった。





家に来るように誘ったのはわたしのほうだけれど、こんなことになるなんて思っていなくて。





「ちょ、いきなりどうしたの」


「大丈夫です、心配しないでください」


「なにが大丈夫なの!?」




ソファーに座るわたしに後ろから抱きついてきて耳元で喋り続ける彼。


話すたびに耳に息がかかって、ちょっとだけ身体が強張る。


それは彼にも自然と伝わるみたいで、意地悪くわざとずっと耳元で話す。





「…この体勢なんとかしたい」


「僕の顔が見たいですか?」



「それとはちょっと違う…いや違わないけど」



"どっちですか"と言いながら後ろからわたしの頬にキスをする。


突然すぎて身体がびくっと反応を示す。



クスッと笑うのが聞こえて、抱きつかれた腕をほどいてわたしの隣に座る。




「なにかいいことでもあった?」



彼にそう問い掛けると疑問の顔つきを見せた。


「どうしてそう見えるんですか?」



「いや、だって…なんか今日の黒子君いつもと違うから」



「今日はこういう気分なんです」



いつもはなんだかんだで真面目でしっかりしているのに、こういう時に限って気分屋。


そんな一面を知っているのもわたしだけなのだけれど。





「珍しいね、黒子君にしては」



「そうですか?」



そう言いながらいきなり顔を近付けてきて、人柄とは裏腹に"キスさせろ"と言うかのような目をした。




断る選択肢はなく、わたしは有無を言わずに目を閉じる。



本当にその瞬間、軽くだったけど唇を重ねる彼。



目を開けて笑うと、彼も笑ってわたしを見つめていた。




「そんな目で見ないでよ」



「どうしてですか?」



「なんか無性に恥ずかしい」



「みくさんは僕のこと嫌いですか?」



「なんでそこでそう聞いてくるの!?わけわかんない」



「……嫌いですか?」




話題を急転換してわたしに聞いてくる。しかも、こう聞いてくる彼はどうなるかわかったものではない。



"嫌いですか?"なんて…、あたしに好きって言わせるのと同じじゃない。



と、内心思いながらもきちんと言う。



「好きだよ、黒子君」





彼はなにか言う前にわたしの唇を塞ぐ。



彼はいつもあまり執拗にわたしを求めたりしない。

それはただ単に焦らしてるだけなのか、その気がないのかわからないけど、いつも優しいからわたしもそれでいいと思う。






でも、今日みたいにたまにはこういう風にしてくれるのも、ありかななんて考えてみたり。



そんなことを考えているのもバレバレだったのか、その日一日中彼のそばを離れさせてもらえなかった。





「これで何回目?」


「もう数えてないです」








ごくたまに見せるその意地悪な顔がわたしをさらに彼の心へと落としていくのだった。










end.

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