PLAYERS

□密着しすぎて
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「──ちょ、黄瀬くん!」



「いいから、静かに!」




そう言われ口を噤む。


今あたしたちがいるのは自分たちの教室。


電気もつけないまましゃがんであたしは黄瀬くんに後ろから口を抑えられて静かにするよう促されていた。


別にこれはなにか黄瀬くんが悪いことをしているわけではなくて。






あたしがそっと忘れ物を取りに来たのだが、そこでなぜだかばったりと彼に遭遇した。





そしてタイミング悪く見回りなのか日直の先生が来てしまったので黄瀬くんはやむを得ずあたしと一緒に隠れたのだ。



下校時刻も過ぎていて、もう夜の8時半になろうとしていた。






先生の足音が廊下に響いていて、静かなこの教室まではっきり聞こえてくる。



それもビクビクしてしまっていたが、やはり何よりも黄瀬くんとこの至近距離で密着していることへのドキドキ感が半端じゃなかった。





彼は元々体格も普通の人より大きいから、この体勢じゃあたしの体なんかすっぽりと彼の体に収まってしまうサイズだ。




実際、いまこの状況でそれが再現されている。




彼の指先から、体から、体温が直に伝わってきて、あたしの体が微熱を帯びる。







そのまま緊迫した様子で2人で息を潜めながら先生の足音が聞こえなくなるのを待った。












──しばらくして。



「……行ったみたいっスね」


「ふう、焦ったぁ」



口を塞いでいた手を離して一息つく。



先生が行ったとはいえ、また来るかもしれないので、依然として声は抑えたまま喋るのだが。





「黄瀬くん、どうしてここにいたの?」



「あした提出の課題、あれ出さないとマジ追試回避できないっスからね。取りに来たんスよ。みくっちは?」



「あたしも、課題忘れてて。……さてと」





その密着した体勢から離れ、自分の机に向かおうと立ち上がろうとして、そばにあった教卓に手をついたとき。





「!?」





急に強い力で腕を引かれて、さっきと同じように黄瀬くんと密着するような体勢に戻ったのだ。



「き、黄瀬くん!?」



びっくりして少し大きな声を出してしまった。すると、



「あんまり大きな声出さないで。先生来るっスよ?」



と、後ろから耳元で囁くような黄瀬くんの声がして、思わず口を噤む。




そして冷静とは呼べないが少し気持ちを落ち着けて問いただす。



「あの、さ…どういうつもり?」




「どうって?見りゃわかるっしょ。まだこうしていたいなーって思っただけっスわ」



「だからって…っ!」



もう一度立ち上がろうとしても、黄瀬くんはさっきと違いあたしを羽交い締めにしたまま動かせてくれない。





ジタバタしてもその力に勝てるはずもなくて。


諦めておとなしくするとふっと笑って"いい子っスね"とあたしを見下すような声を漏らす。






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