PLAYERS
□いつも言葉にしないから
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好きだ好きだと言ったって、彼のわたしに対する行動1つ1つが好きなわけではない。
現に今の状態は本当にやめてほしい。
「赤司君てば、離れて」
「どうして?」
「どうしてって…みんな見てる」
今の赤司君は、わたしに真後ろから手を回してきて、後ろから抱きつくような感じになっている。
しかも場所が場所で、学校の教室。時間も休み時間という、まわりに同級生がたくさんいる中で、である。
どういうつもりかはわからないけど、わざわざ隣のクラスからやってきたと思えば有無を言わせずにそっと抱きついてきた。
ただの甘えたがりな彼氏?と普通なら思うだろう。
でも、わたしは知ってる。
こんな風にわたしが恥ずかしがるような、平たく言えば嫌がるようなことをするのは彼が甘えたがりなのではなく、陵辱的であるからである。
その証拠に、実は赤司君は2人きりの時のほうがあまり積極的ではない。
まぁそれでも気分がいいと想像するだけでぞっとするくらい積極的になることもしばしば。
でも、それは甘えとはまったく別物。
どちらかと言うとわたしの方が甘えたがりのような気がする。
でもさすがに、こんな人前でそれを求めたりはしない。
抱きつく手を外そうと、赤司君の腕に手をかけるが、一層力の強さが増しただけ。
「もう…やめてよ、恥ずかしいから」
「恥ずかしいなんて本望じゃないか」
「違うよ」
「何ならここでキスする?」
「ねぇわたしの話聞いてた?」
赤司君はわたしが言うことを全部スルーした。聞こえてるくせに…あまりに一方的だった。
「耳まで真っ赤になった」
「うるさい…!」
「身体熱いけど、熱でもあるのか」
「誰のせいだと思ってっ……」
思わず怒りの混じった声を漏らす。
すると赤司君はいつもみたいにクスッと笑い、耳元で囁くように言った。
「今日は、僕が部活終わるまで待っていろよ?」
またこれだ。
赤司君がクラスに来たわけなんてただこれを伝えるために決まっていると今気付く。
それだけのためにわたしにこんな恥ずかしい思いをさせに来たんだ。
しかも部活終わるまでって…一体何時間待てばいいのよ。
バスケ部はなんだかむちゃくちゃ強いらしく、下校時間を過ぎても練習を延長してることも珍しくない。
今日は何時になることやら。
諦め半分で赤司君に「わかったよ」と伝える。
ここで"嫌だ"なんて言ったらどうなるかなんてわかったものではない。逆らえないのだ、この人には。
でも赤司君がわたしを他の女の子とは違う風に扱ってくれてるのは一目瞭然だから、なんだかんだ赤司君のことが好きなわたしにとっては、それも許せてしまう。
いや、許さざるを得ないとも言えようか。
チャイムが鳴ると、赤司君はわたしから離れ、「じゃあまた」と告げて自分の教室に帰っていく。
こういつもいつも恥ずかしい思いをさせられるのに、それだけは嫌なはずなのになぜか赤司君がいなくなると寂しいと感じるのだった。
そのたびにやっぱり好きなんだなぁと実感する。
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