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□慣れないアプローチ
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"神崎さんに恋をしました"
部活帰り、急に黒子にそう告げたられた火神は思わず飲んでいたミネラルウォーターを吹き出してしまった。それこそ、よく漫画にあるような勢いで。
「ちょっおまっ…マジか」
「はい、僕は本気です」
そのあまりに真剣な眼差しに、火神も茶化すようなことはできるはずがなく、びっくりした様子で黒子に問う。
「で、どーすんだよ?」
「わかりません。女の人を好きになったこととかありませんし…。だからこうして火神君に聞いてるんじゃないですか」
「オイ、当然みたいな顔して言うなよ!」
しかし火神の言葉は完全にスルーされて、黒子はさらに自分の話を続ける。
「どうしたらいいでしょう」
そんな黒子に呆れながらも、火神はそのバスケやその他必要最低限のこと以外ではまるで歯が立たない頭をフルに使って黒子にアドバイスをする。
「……とりあえず、連絡先聞くだろ…それからデートに誘うだろ……んで最後にチューすりゃ文句ねーだろ」
なんだか大雑把すぎてぜんぜんわからないですよ火神君、と黒子は思ったのだが、火神の表情が真剣そのものだったので、
「じゃあとりあえず連絡先を交換します」
と真顔で返した。
─
こんなことは実は黒子にとっては初めてである。
黒子はクラスメートにも少々忘れられがちな存在であるためか、誰かにアドレスを聞かれたりといったことはあまりなく、ましてや自分から聞きに行くなんて人生で経験したことがなかった。
それでも、黒子はやると決めたのだ。
小さなメモ用紙に自分のアドレスと携帯番号を書いて、それを握り締めてみくの座る席へと向かう。
ちょうどみくは1人でいるため、絶好のチャンス。
黒子は意を決していつもより力みながらみくに話しかけた。
「神崎さん」
「うわっ黒子君か!びっくりさせないでよ」
「すみません。あの」
黒子は自分の手が微かに震えているのに気がついた。
こういうのって緊張するんだな、と初めての感覚にしばし動揺したが、しっかりとみくに向けて言うべきことを伝えようとする。
「ここに、連絡してもらえませんか」
「え?連絡してもらえませんか??」
「これ、僕のメールアドレスです。よかったらどうぞ」
と、黒子が恐る恐る差し出すと、みくは不思議そうにしながらも頷いた。
「じゃあ、あとでメールするね」
断られたらどうしようかと思っていたが、快いOKにちょっと幸せな気分になる。
そしてその日の夜にきちんと黒子のもとにメールをしたみく。
黒子は存在が忘れられがちでありそれは自覚済みのため、実は不安で不安で仕方なく、それは部活に支障を来すほどだったのである。
おかげで黒子だけは今日の部活のメニューが3倍になってしまい、正直凹んでいたのだが、ちゃんとメールが来たのでそんな疲れも吹っ飛んでしまっていたのだった。
それからも、慣れないアプローチは続いた。
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