PLAYERS

□初めて見せた弱さ
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"僕の命令は絶対だ"



彼女にまでそんな風に言える赤司くんの神経を疑う。でもそこが彼らしくて、そんなところも認めているから一緒にいられるわけなのだが。




さすがはキセキの世代と呼ばれている赤司くん。試合をしているときの彼はチームで一番頼りになる存在だし、誰もが信頼をしている。


試合が終われば観客はみんな口々に赤司くんのことを話し出す。もっとも注目されているだけある。

コートに立っているときの彼は凄く遠い存在のように思えてならない。でも、なんだかんだ言って試合で疲れてるはずなのに、わざわざ今すぐ会いに来いだのお決まりの台詞を並べてくる。


そんな風に言われたら、断る選択肢は最初から存在しない。






その日も試合が終わってから"会おうか"と無機質なメールが入っていた。迷うことなく返信して、赤司くんのことを待つ。





「みく」


「赤司くん、お疲れ様」


「ああ。今からみくの家に寄ってもいいか」


「うん、お好きに」




もう確認なんか取らないでいいと思う。意味なんてないんだから。






あたしの家に着くと、お母さんがパタパタと居間から玄関までやってきた。


「あらお帰りなさい。今日は赤司くんも一緒なのね?」


「お邪魔します」



こういうときの赤司くんはとても礼儀正しくて、さすがだなぁなんてちょっと感心する。



「あ、そうだ赤司くん。部活だったんだしシャワーくらい浴びてったら」


あたしがそう言うと"当然だろ"というような顔をして、


「そうさせてもらおうか」


とあたしに言う。

はじめは嫌気がさしていたその見下すような顔もあたしの好きなものに変わった。時間というのは恐ろしいものだ。…違うか、本当に怖いのはあたしにそんな顔すら見せなくなることか。




「服はどうする?」


「この前僕が置いていったやつがまだあるだろ?それを着るよ」


「ん、了解」




急ぎ足で自室に向かって、赤司くんがこの前置いていったという服を持ってもう一度彼の元へ行き、それを手渡す。


「ありがとう」



赤司くんはそう言って、さもこの家に住んでますというかのようなオーラを醸し出して、風呂場へ消えた。




ちなみに、この家には服だけに限らず赤司くんの私物がちらほら見受けられる。


どれも忘れて帰っていったわけではない。わざと、置いて行っているみたいだった。理由は明白じゃないけど、おそらく彼なりに考えがあってのことだろう。

たとえば、今日みたいな日の為に、とか。



赤司くんの全てを把握してるわけじゃないから、そこのところはぶっちゃけあたしもわからない。








しばらく居間でくつろいでいると、シャワーを浴び終えた赤司くんが姿を見せた。



水も滴る良い男なんて言葉、一体誰が考えたのだろう。まさにその言葉が相応しいとふと思ってしまった。


濡れて水が滴り落ちる髪に、お湯の温度でほんのり赤くなった肌。それでも涼しい顔をしている赤司くんに見とれる他なかった。






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