PLAYERS
□帰らせたくない
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「今日は帰さねぇから」
「………はい?」
あたしが"もう帰る"って言ってから早30分。和成は自室の扉の前に立ちふさがり、あたしを部屋から出すまいとする。
「何で帰してくれないの。和成ってばいつからそんな束縛する人になっちゃったのよ」
呆れた目をして和成を見据えると、"ちげーよ。愛だよ、愛"とか言ってくる。さっきから繰り広げられているのはこんなやり取りばっかりである。
「愛があるのならあたしを一度家に帰してくんないかしら」
「だから、イヤだっつってんじゃん」
「どーしてよ、もう」
「とにかく今日は帰したくねーんだわ」
どうせ(間抜けな)和成の思考回路のことだ。世の中の女の子はみんな"今夜は帰したくない"とか言っておけばコロッと落ちるとでも思っているんだろう。
そんなこと言わなくたってとっくに落ちてんのよ、と密かに思ったことは和成には秘密である。
「つか、あんまダダこねっと、こっちだって強行手段使うからな」
「はぁ?ダダこねてるのは和成の方じゃ」
不意に和成の表情が変わった。何かを企むような、そんな目つきになる。
その目からだいたい察しはついた。和成がこんな表情をするときはたいていろくなことを考えてなんかいない。それは過去の経験から立証済みである。
そこで一歩後ずさると、距離を縮めるように和成が迫ってきた。
そこでまた一歩後ろに下がろうとしたら、足がもつれて見事に尻餅をついてしまう。
「……ひゃっ」
和成は待ってましたかと言うかのようにそれを見逃そうとしなかった。
倒れそうになったところであたしの両肩を押して無理やり唇を押し付けてくる。その勢いで押し倒された。
舌先がいきなり唇を割ってくるものだから、抵抗する力も抜けて、必死にそれを受け止めるしかなかった。
「んっ…ふっ…ん」
「帰りたいんでしょ?もっと抵抗してくれていいんだぜー?」
と、一度唇を離して意地悪く笑う。"それとも"と言いながらあたしの頬に手を当てがる。
「やっぱ帰りたくなくなった、とか?」
「……ちが……っ」
「そんな泣きそうな目しながら言っても説得力ねーって」
こんな風になった和成にはなにを言っても正直なところほとんど意味はない。けど、一応必死に抵抗しているつもりなのだ。
説得力ないと言われてしまったので、意図的に変えて少し睨むような目をすると和成はケラケラ笑い出した。
「うわ、マジかわいい。それ、俺大好き」
いきなり好きと言われて無意識のうちにドキッとしてしまう。
ああ、この条件反射のようなものはなんとかならないだろうか。いつもだったらいいけど、こんなときに照れた顔なんかしたらどんどん和成のやりたい放題になるだけだから。
「…和成の変態」
「お、いいのかなーそんなこと言って」
やはり今の和成にはなにを言っても無駄らしい。
「………もう、なんなのよ」
「まぁまぁ、そんな怒んなって」
とかなんとか言いながらあたしの首筋にキスをする。
くすぐったくて退けようとしても男の力にはやっぱり勝てない。
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