Sweet
□だいすきなきみへ
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「好きなの財前!付き合って!!」
「はぁ?あんたなんかと付き合うとか死んでもあらへんわ。はよ消えて」
ああ、目撃してしまった。
光が告白されてるところ。
ちょうど光の教室の前を通りかかったときに、教室から聞こえてきて、つい聞き入ってしまったのだ。
しかもきっぱり光はふってしまっている。
消えて、はないでしょ光。
あーあ、女の子泣きそうじゃん。可哀想。
ちらり、と教室に目をやる。
光はかったるそうにして女の子を見据えていた。
次の瞬間、ふられた女の子が教室から飛び出してきたので、あたしはとっさに隣の空いていて誰もいない教室に入ってしまった。
女の子は廊下を走ってどこかへ行ってしまったらしい。
ふう、見つからなくてよかった。
扉付近にため息をついて冷や汗をふいて座り込んだ。
「盗み聞きはよくないっすよね?あき先輩」
「きゃあ!!Σひ、光、気づいてたの!?」
扉のところに無愛想な光が立っていた。
「気付くわ普通。わっかりやすく物音たてとるんすから、あんた」
あ、あれ?
「ごっごめん!そんなつもりはなくて…。えーと…っ、たったまたま通りかかっただけなの!だからそのっ……」
「うっさいすわ。なに弁解はかっとるんすか。あんたのしたことは明白な事実やないすか。ほな部長にでもチクってきますかな」
「ちょ…え…待っ…」
たしかに弁解はかろうとしてたけどね?
何でそこで白石が出てくるの!?
白石こそ完璧な無関係者じゃないの!?
「ちょちょちょ、何で白石にチクっちゃうの!?(泣)」
「…だってあき先輩、部長のこと好きっすよね?」
「……は??」
いきなり言われた言葉にあたしは一瞬固まる。
どうしてそうなるんだよ。
それこそ弁解すべきことではないか。
「あたし…別に白石のこと好きじゃないし…」
たしかに白石はかっこいいって有名だから、あたしの友達にも白石に想いを寄せてる人はいるよ?
けど、あたしは白石を好きではない。
これだけは明白な事実。
光は勘違いをしているらしい。
なぜなら、あたしの好きな人は、光だから。
そう、光が好きなのだ。
だから白石のことは好きじゃない。
「ならあき先輩は一体誰が好きなんすか?」
「えっ?あたしは…」
急に聞かれて、声が大きくなってしまう。
言えるわけがない。
光に、好きなんて言えるわけがない。
「…言えへんの?」
「…だって言いたくないもん」
「ほな、白石部長んとこ行って、『あき先輩が部長のこと好き言うてました』って言うてくるわ」
「だからなんでそうなっちゃうのっ!?」
「だってあき先輩、えらいむかつくから」
え、むかつく?
「悪かったね!むかつく女で!」
立ち上がって光を少し下から見据えた。
光は少しもひるんでいない。
「前言撤回しなさいよ」
「無理っすわ。ほんまの気持ちやし」
「あたしのなにがそんなにうざいのよ?」
「さっきとか」
さっき?告られたのを盗み見聞きしてたことか。
あれは偶然だし、別に狙っていたわけではない。
「見ちゃったことは謝るよ。でもそれだけでむかつくなんていくらなんでも酷いんじゃない?光」
「それだけやないで。この前あんた白石とごっつええ雰囲気やったっすよねぇ、部活のとき」
「…へ?」
光の言いたいことがわからなくなってきた。
すると光はじりじりとあたしに詰め寄り、黒板の隣の壁に追いやった。
「……あき先輩はどんだけ俺を嫉妬させれば気が済むんすか?だからむかつく言うとるんです」
「え…?」
ぽかんとして、そのまま立ち尽くしていた。
「ちょ光…それどういう意…」
「黙って聞いててくれます?」
ぴしゃり、とあたしの言葉は見事に止められた。
あたしは観念して、光の話を黙って聞くことにした。
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