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□…03話
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「沙希〜試合〜」
「は?」
ジャッカル桑原との試合が終わり、あたしのところに真っ先にやってきた丸井。
で、肝心の結果はというと。
さすがはレギュラー同士。
ほかの試合とは全然違う盛り上がりだった。
タイブレークまで持ち込んだ、けれども最後はあと一歩のところでジャッカル桑原が勝った。
「もうちょっとだったのによ」
「わりーなブン太。でもここからは今までみたいな軽い試合じゃいかねーな。ここからはレギュラーとの試合ばっかだ」
「ジャッカルお前ー、俺との試合が軽かったって言いてえのかよ!?」
「いや…そういうわけじゃ…」
「なんかすげーむかつく。まっせいぜい次の試合も軽く頑張れよこの野郎!行こうぜ沙希」
と、ジャッカル桑原を置いてあたしたちは別のテニスコートに行くことに。
「いいの?」
「いいからいいから。試合しようぜー」
「だからあたし初心者だよ」
と言っている間に丸井はネットの向こう側に。
「手加減するし軽く打ち合うならできんだろぃ」
“遊ぶ感じでいいからよ”
そう付け足し、サーブの構えを見せる。
あたしはラケットを構えて、打球を待った。
丸井がサーブを打った。
手加減してくれているらしい。
あまりスピードがない。
おかげで簡単に打ち返せた。
「おっ沙希、なかなかいいフォームじゃん」
とか言いながら軽く返してくる丸井。
「テニスって結構、難しいんだ…ねっ」
少しほっとした。
まともに打ち合えなかったら、きっと丸井をがっかりさせただろうし、あたしも面目なくなる。
しばらく打ち合っていたら、ふと丸井が言った。
「……お前疲れねぇの?」
「え?なんで?全然平気だけど」
何を言うかと思えば…、よくわからないことを言う。
「球技大会のあとにこんだけ走って、疲れねぇのかなって思っただけ」
ああ、そういうことか。
「あんた、バスケ部の体力なめてるでしょ」
「いや、別に」
「あたしたちが毎日どれだけ走ってるか知ってる??」
少々呆れた顔で問いかける。
「まあ…それなりにってとこか?」
「やっぱなめてるでしょ」
プレーを中断してネット際に寄った。
「じゃあどんくらいだよ」
「せいぜい丸井達テニス部と並べるくらい走ってるよ」
「え!!まじかよ!?」
相当驚いているらしく、大きな声で聞いてきた。
「嘘ついてどーすんの。(仁王じゃあるまいし笑)」
「バスケ部も大変なんだな」
「テニス部ほど人数多くないけどね」
「けどよぉ…何でそんなにも走ってんだよ?」
何でって…。
こいつ絶対バスケのルール知らないんだな。
「あのねぇ…8分×4回分は走れないと試合にならないの!」
ほんと、呆れる。
「すげーな沙希!頑張ってるんだなっ」
「けど丸井も頑張ったからレギュラーなんでしょ」
なんか、自分で言っててやけに恥ずかしくなった。
なんか丸井も動揺したらしく、コホン、と咳ばらいをした。
「ま、まあなっ」
そのあと、自然な流れで再開した。
「てかよっ…沙希ってテニスうまいよなっ」
「別に…丸井ほどじゃないよっ」
ラリーをしながら話しているあたしたち。
いつからあたしはこんなにも器用なことができるようになったんだろう。
というよりあたしは。
いつから男と二人でいても平気になったのだろうか。
いや、男といっても限定して丸井だけだ。
話もわりとはずむし、チャラチャラした男から守ってくれたし………。
あの時の丸井はなんか、ちょっとかっこよく見えたのも事実。
もしかして、
惹かれてんの?あたし…。
「…あっ……」
そう思った瞬間、不意にボールが意識から消えた。
あたしのミス。
「どんまい沙希!もういっちょやるか!」
「ご、ごめん」
このあたしが惹かれてる?
そんなまさか。
ありえない。
恋なんてしたことないし好きになりたいと思ったことはない。
まわりの男子バスケ部の奴らに告白されたりもした、けど…これっぽっちもキュンとしない。
そんなあたしが…、最近よく話すってだけのテニス部の人に惹かれてるっていうの…??
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