投稿小説
10/28(Thu) 14:00
探求心
とこのま
紅の創作です。
管理人様のキャラも勝手ながら使わせて頂こうかと思います。
では本文
「欲望」
青く澄んだ空の真下で、男は一言呟いた。
トレンチコートに身を包み、気怠そうに空を見上げて男は続ける。
「喜び、悲しみ、怒り、恋慕?か。そんなチープで定式化された感情なんかより、ずっと分かり易い感情だな」
とあるビルの屋上には、トレンチコートの男の他にもう1人いる。
落下防止用のフェンスにもたれかかるようにして座る、背の高い女。
長い黒髪が地面に広がり蜘蛛の巣を描いている。
そんな女に語りかけるように、トレンチコートの男は尚も続けた。
「なぁ、おい。『欲しい』って時あんだろ。体が、心がどうしようもなく欲しがっちまう何か。それが人間を人間たらしめるモンだ」
女は何も答えない。
ただ浅い呼吸音が、腫れた唇から零れるだけだ。
女は傷だらけだった。
長い手足は紫色に腫れ、裂けた服から血が滴っている。
トレンチコートの男は血で濡れた拳をブンブンと振った。
「アンタにもあんだろ?俺はアンタを殺さなきゃならんが、アンタの願いが聞きたい。どうだ、言ってみちゃくれねぇか」
「………」
「ん?」
女の唇が微かに動く。
「……助けて…下さい……」
それを聞いた男は、困ったように息を吐く。
葛藤では決してなく、言うことを聞かない子供に困り果てたような顔で、再び空を見上げた。
首と連動して、脚がゆったりと上に上がる。
それから酷くつまらなそうな顔に戻り、空き缶でも潰すような気軽さで、
「そりゃ無理だ」
振り下ろした。
赤く染まった空の下、ビルを眺めながら男は街路樹の側に座っていた。
手には小さな手帳とペンが握られている。
ビルを眺めるのを止めた男がページを開くと、汚い字で幾つかの数字が書かれていた。
その内の1つの数字を書き直す。
『助けて欲しい』×75
手帳とペンをポケットに乱暴に突っ込んだ男は、鼻を啜りながらビルに向き直った。
そのまま面倒臭そうに腰を上げ、大きな欠伸を1つ。
「つまんねぇの」
こんな感じで進みます。
☆の付いている部分は必須項目です。